今回,5部門を獲得するなどアメリカでの人気の高さがうかがえた「Shadow of the Colossus」の上田文人氏(左)ら
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毎年恒例の
第6回デベロッパーズチョイス・アワードの式典が,GDCの会場であるSan Jose Convention Centerの向かいにあるCivic Auditoriumで,アメリカ時間の3月22日夜に開催された。
デベロッパーズチョイス・アワードとは,その名のとおりゲーム開発者達が投票によって選ぶゲーム賞。スポンサーなどの影響が少ない,まさにゲーム開発者が仲間の功績を称えるという趣向になっている。それだけに,受賞した開発者達の喜びもひとしおなのである。
さて,今年のデベロッパーズチョイス・アワードでは,2月にラスベガスで行われたD.I.C.E.サミットと同じく,Sony Computer Entertainment Americaの「Shadow of the Colossus」(邦題: ワンダと巨像)と「God of War」(邦題: ゴッド・オブ・ウォー),そしてHarmonix Music Systemsの「Guitar Hero」という三つのプレイステーション2ソフトに人気が集中していた。特別賞を除いた10部門のうち,実にShadow of the ColossusとGod of Warが6部門,Guitar Heroが4部門にノミネートされていたのである。
ほかにも,Nintendo DS用ソフト「Nintendogs」が3部門,「Animal Crossing: Wild World」(邦題: おいでよどうぶつの森)が2部門,そしてXbox360用ソフトである「Project Gotham Racing3」が3部門受賞するなど,今回入賞した作品は,コンシューマ機用ソフトが圧倒的に強かった。
PCタイトルに目を向けると,Writing部門に「Freedom Force vs. The Third Reich」と「Indigo Prophecy」がノミネートされていたので,それなりに公平に選択されているように思えた。ほかにも,Audio部門で「Call of Duty 2」,さらにはBest Game部門で「The Movies」の名が挙げられていたが,どれも受賞するには至らなかった。
このアワードが,FPSやストラテジーといったジャンル別になっていれば,PCタイトルの入賞作品が増えていたかもしれない。2005年は「Half-Life 2」が4部門を受賞していただけに,PCゲーマーには少しさびしい結果となってしまった。
●Best Game of 2005
授賞式のフィナーレを飾ったBest Game賞受賞時には,
プロデューサーの海道賢仁氏率いる「Shadow of the Colossus」チームのメンバーが壇上に並んだ
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結果から言うと,Shadow of the ColossusがBest Game of 2005をはじめ,5部門を受賞して今年の話題をかっさらった形となった。本作のプロデューサーである海道賢仁氏や,ディレクターの上田文人氏を含めて10人以上で来ていた開発チームのメンバー達は,入れ替わり立ち代わり壇上に上がり,喜びを爆発させていたのが印象的だ。会場内での拍手や歓声も大きく,その人気の高さがうかがえた。
とくに,新しい試みを行ったゲームに与えられるInnovation賞に本作が選ばれていたことからも,開発者達の間から「新しいタイプのソフト」として認識されていたのが分かる。ザコキャラなしで,武器からサウンドまでに浸透したミニマリズム,「ICO」から続く世界観のグラフィカルな統一性,パズル要素など,ゲームとして煮詰められたアイデアに,開発者達は“痛いところ”を突かれたようなものなのだろうか。「一度でいいからあんなゲームを作ってみたい」という願望のようなものが,欧米の開発者達からヒシヒシと伝わってくるようだった。そこを素直に評価しているところも,アメリカ的な良さなのである。
●Marverick賞 新境地を開いた現世代の開発者に贈られるMarverick賞は,Guitar HeroのHarmonix Music Systemsを設立したMike Dornbrook(マイク・ドンブルック),Eran Egozy(イーラン・エゴジー),Greg LoPiccolo(グレッグ・ロピッコロ),Alex Rigopulos(アレックス・リゴプロス)の各氏に与えられ,紹介人を務めた七音社の松浦氏から祝福を受けた。
同社は,10年前にマサチューセッツに設立されてマウスやジョイスティックを楽器に見立てたPC用ソフト「The Axe」を開発した後は,「Frequency」そして「Amplitude」と一貫してプレイステーション2用の音楽ゲームを作り続けてきた会社だ。今回のGuitar Heroは「EyeToy」に触発されて制作されたものと言われ,ギター型の入力デバイスを使ってのパーティがアメリカで大人気となっている。
アメリカで大きな人気を得たGuitar Heroを開発したHarmonixの面々
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●First Penguin賞 “First Penguin”という奇妙な名前の賞は,未知の世界に進みゲーム業界の可能性を広げた人物に与えられる賞だ。サメが待っているかもしれない海に飛び込み,餌があるかを確認する勇気あるペンギン。そんなイメージになぞられている。
今年のFirst Penguin賞を受賞したのは,Will Crowther(ウィル・クロウサー)とDon Woods(ドン・ウッズ)の両氏である。この二人は,スタンドフォード大学に在籍した友人同士で,クロウサー氏が閃き,それをウッズ氏がフォートラン言語でプログラミングすることで,幻のゲームと言われている「Adventure」の開発に成功した。これは1976年に登場し,のちにアドベンチャーやロールプレイングと呼ばれるジャンルへと発展していった作品だ。
●Community Contribution賞 ゲーム業界への貢献度の高さをたたえるCommunity Contribution賞を受賞したのは,Chris Hecker(クリス・ヘッカー)氏。彼は古くからIGDA(International Game Developer Association)のメンバーであり,デザインや技術的な問題点を常に提唱してきたプログラマーだ。GDCでも人気セッションの一つ「Experimental Gameplay Workshop」で実験的なゲーム制作を推し進めてきた人物。ほかにもSIGGRAPHで講演したり,雑誌に投稿したりと発言力が高い。
ヘッカー氏は,8年ほど在野で活動を続けていたが,最近はMaxis(Electronic Arts)の最新作「Spore」の開発に関わっており,プレイヤーのクリエイティビティを加速させるProcedurelismの浸透を促す,旗振り役になっているようだ。
●Lifetime Achievement賞 さて,業界内の功労賞と言えるLifetime Achievement賞に選ばれたのは,PCゲーマーには“ロード・ブリティッシュ”としてよく知られたRichard Garriott(リチャード・ギャリオット)氏。ギャリオット氏は,D.I.C.E.サミットでも同等のインタラクティブ・アチーブメント賞を獲得しており,嬉しいダブル受賞となった。
1970年代から10代でゲーム開発に関わり,'90年代にはすでに“業界の古株”の仲間入りをしていたギャリオット氏は,Ultimaシリーズや「Ultima Online」の開発を行っており,彼の作品に導入された革命的なゲームプレイや技術も少なくない。本人もまだまだ意欲的らしく,「恐縮ですが,まだまだ私は現役なんですよ。こんな賞をいただいて,なんか年取っちゃったように感じますね」と,会場を沸かせていた。実際,長らく開発が遅延している「Tabula Rasa」は,年末のリリースが確実視されており,今後はギャリオット氏のメディアへの露出度が増えていくと予想できる。彼はD.I.C.E.サミットでも「今が2度目のチャンス」であることを語っており,かなりやる気になっているようだった。(奥谷海人)