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第6回 4Gレビューコンテスト最終結果発表:gingerさんが特別賞に
2006/03/01 22:51
 2005年12月28日から作品を募集していた,「第6回 4Gレビューコンテスト」最終結果を発表する。
 結果は,以下のとおり。

<大賞>
該当なし

<特別賞>
・ginger さん作「蒼い空のネオスフィア」

<佳作>
・takeov3 さん作「シリアスサム II」

以上である。
 今回初めて設けられた「特別賞」について,説明が必要だろう。簡単にいえば,大賞には惜しくも届かないが,「佳作」では物足りないと判断し,文字どおり今回特別に作った賞だ。

 実は今回の審査時,4人の審査員の全員が,この作品を推した。これは,今回一次審査を突破した作品の中で唯一であるのみならず,過去においても珍しく,その一点を理由に,大賞にしてもいいなじゃないかという声もあったほどだ。
 しかし,その4人の誰一人として,このレビューを「1番」にはしていなかった。詳しくは下の選評を読んでいただきたいが,簡単にいえば,「誰もが2番と思うレビュー」というのが,この作品を大賞にできなかった理由である。全員が2番と思うものよりも,10人中6人が1番と思う作品こそ,大賞にふさわしいのではないだろうか。
 ともあれ,全6回の4Gレビューコンテスト中,大賞受賞者であるSluta氏に次ぐ結果なのは確か。過去の参加者の“のべ人数”は数百人に上るわけで,そこでも「2番」と考えれば,かなり良い成績だ。ぜひまた,大賞を目指して応募してほしい逸材である。

 一方佳作を受賞した作品は,その対極にあるといえる。二人の審査員が推したが,ほかの二人は,むしろ低い評価を下していた。掲載したレビューを見て,「なぜこれが佳作?」と思う人もいるかもしれない。
 まず文章力としては,及第点以下といわざるを得ない(実は掲載できるギリギリにまで手を入れてある)。
 しかし,ライターにとって最も大事なものは,「文章力」ではない。文章は,あとで編集者がいくらでも直せるからだ。ゲームの本質を見抜き,的確に紹介する力のほうが,重要なのである。
 これまた詳しくは,下の選評を確認してほしいが,この作品に,二人の編集者に推させるだけの何かがあったのは事実。takeov3さんの,今後の成長に期待したい。


■■選評■■
※レビューコンテストという性質上,作品の引用部分は,誤字・脱字や句読点の表記など,最低限の校正しか行っていません

レビュワー:ginger さん
「蒼い空のネオスフィア」(特別賞受賞作)
 →作品は「こちら」

 一読して,丁寧な記述と文章のリズムに感心した。物事の楽しさを自然な文で伝えるには,因果や具体/抽象といった適度の論理要素で結ばれた文を,ちょうど良い長さで置いていくのが大切だが,そのバランスが実に巧みである。ウェットに言えば,作品への愛着がストレートに感じられ,好感が持てるということだ。
 選考過程で,審査員全員がこの原稿に及第点以上をつけた。それには全体に整った章立てや,読者の頭に疑問符を残さない首尾一貫した記述もあるが,文章の基本的なノリへの評価が大きかった。ただし,意外な記述や卓越した見解がないことについても,審査員全員の意見が一致する。惜しくも大賞を逸した理由はそこだ。
 作品の,部分ごとの魅力については丁寧な言及があるものの,全体を評した核心的な記述(卓越した見解の活躍場面はここだ)を欠くのが惜しまれる。例えば「街発展」部分がゲームの面白さをめぐる論旨に回収されていない点や,街の発展とストーリーの関係性があまり語られていない点などがそうだ。この作品のストーリー性とゲーム性を前にしたとき,説明のフレームをさらに突き詰めていれば,必ずやもう一段階上を目指せたはず。現時点でそう思えるだけの段階に,本稿は達している。その危なげない筆力に,まずは讃辞を贈りたい。(Guevarista)


レビュワー:takeov3 さん
「シリアスサム II」(佳作受賞作)
 →作品は「こちら」

 購入して読むメディアと違い,Webサイトでは,行きずりの人が「どれどれ」と覗き込むことも多いはずだ。そのとき重要なのは,冒頭数行でいかに人を引きつけられるかだろう。「このゲームは……」とゆったり始めても,まあ,いいのだけど,よほど有名なタイトルならともかく,通りがかりの人に読んでもらうには,「勢い」と「長すぎない」ことが大切なのではないかと思っている。英作文では,冒頭部分を「フック」と呼ぶ。まさに読者をフックで引っ掛ける感覚だ。
 正直,「シリアスサム2」のレビューはかなり荒削りではあるが,候補作の中で唯一,それらを備えているように感じた。ゲームの立ち位置とか,枕の部分の内容には,ちと賛同しかねる部分もあるが,そんなことはちょっと勉強すればいいだけの話。月並みではあるが,今後が楽しみだ。(松本隆一)


レビュワー:深見康晴 さん
「眠らない大陸 クロノス」

<冒頭部分>
 「眠らない大陸 クロノス」(以下クロノスと略す)は,オープンβテストを1か月程度で済ませ本サービスへと移行するMMORPGが多いのに対し,βテストを4か月あまりの長期にわたって行った異例のタイトルだった。
 筆者は,このタイトルにオープンβテストから参加し,熱中してプレイした一人である。熱中した理由は筆者にとって初めてのMMORPGだったという点が大きい。コンシューマRPGにはない,ネットワークを通じての他者とのコミュニケーションは,コンピュータRPGの原点ともいうべきテーブルトークRPGの楽しさを筆者に思い出させてくれるものだった。チャットによるコミュニケーションの楽しさはどのMMORPGにもあるものだが,コンシューマRPGで味わえなかった面白さを与えてくれたクロノスに,筆者は強く惹かれたのである。


 MMORPGのレビューだけを見ても,優れた応募作は多いのだが,そこで審査員達が職業柄どうしても気にせずにはいられないことが一つある。ほかのタイトル(この深見氏の場合,クロノス以外のタイトル)もレビューできるかどうか,である。
 2年以上も運営されているクロノスをオープンβテスト時から遊び続けているとのことで,作品に対する愛情に並々ならぬものを感じる。この愛情を,ほかの作品に対しても注ぎ込めるなら……と,つい考えてしまうのだが,ここはあくまでレビューそのものを選評する場。
 深見氏の特徴は,手堅い作品を手堅くレビューしているところだ。装備品の合成やRvRといった,今となっては珍しいともいえない要素を,本作の設定になぞらえつつ,読んだ人が面白そうに思えるよう,うまく紹介している。
 また,文章もとても上手なのだが,にもかかわらず「佳作」以上に推しづらいのは,2年以上も愛情を持ってプレイしてきたにしては,深部まで踏み込んでいない,無難すぎる内容ゆえだろう。とはいえ,必要な素地は十分。次回は“さらに踏み込んだクロノスのレビュー”ではなく,新タイトルなども視野に入れつつチャレンジしてもらいたい。(Kawamura)


レビュワー:氷霧 さん
「ニード・フォー・スピード モスト・ウォンテッド」

<冒頭部分>
 Need For Speedシリーズといえば,Electronic Arts社から発売され,派手な装飾を施した車で市街地を爆走するという,一風変わったレースゲームとして世界中で大ヒットしている。
 シリーズの一般的な流れとしては,車をディーラーから購入し,ショップで愛車を改造し,ストリートレーサー(市街地でレースをするドライバー)になるというものだ。BMWやMercedes-Benzなどの各種高級車も用意されており,憧れの車を猛スピードで運転できる楽しさが味わえる。
 カーマニアの心をガッチリと掴んできた本シリーズに,ついに待望の最新作がお目見えした。それが今回紹介する,「ニード・フォー・スピード モスト・ウォンテッド」だ。前作である「ニード・フォー・スピード アンダーグラウンド2」から継承された機能に加え,実在する人間の役者を用いた人物グラフィックス,警察との激しいカーチェイスなど,車好きでなくても闘争心ならぬ“逃走心”を駆り立ててくれる要素が多分にある。


 「見られることを意識している」というのが,この作品の良いところだ。例えば,“見出し”に凝っている。パトカーとのカーチェイスについて書かれたセクションにつけられた見出しは,「逮捕という名の“地獄”は,常に背後から迫っている!」といった案配だ。また,「画像掲載位置を指定している」「箇条書きを多用している」「テーブルの指定がある」など,読者の読みやすさを考慮していることが,端々からうかがえる。さすがは前回の佳作受賞者といったところか。
 しかし,ゲームのレビューとして見た場合,“やや味気ない”というのが正直な印象。要素の紹介に徹するあまり,読み手に,まるで「パッケージの裏」を読んでいるかのような印象を与えている。
 レビューはパッケージの裏ではないし,マニュアルでもない。最低限の要素を網羅する必要はあるが,それらを平等に扱う必要はない。ウリとなる部分はじっくりと,ありきたりの部分はサラリと書くと,より良いレビューとなるだろう。
 レビューには,ある程度のエンターテイメント性も必要である。そのゲームに興味を持っていない人が読んでも,それなりに楽しめるのが,良いレビューだ。そのレビューをきっかけに,ゲーム自体にも興味を持ってもらえるかもしれない。しかし,味気ないレビューでは,そもそも読んでもらえないだろう。
 「読みやすくするための工夫」はすでに及第点以上なので,次は,「読ませる工夫」を考えてみてほしい。(Iwahama)


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http://www.4gamer.net/news/history/2006.03/20060301225121detail.html