MSI,MXM2枚を搭載したSLIグラフィックスカードは今年末発売?
東京秋葉原でMSIの新製品発表会が開催された。 今年でMSIは創立20周年を迎えたということで,創業時の苦労話なども披露されたほか,多くの新製品が発表されていた。
当日はMSI製品全体の発表会となり,マザーボードやサーバー製品など多岐にわたる製品の予定が示されたが,4Gamer的に関わりのありそうなグラフィックスカード製品については,ATIとNVIDIAの2系列についてロードマップが提示された。写真のとおり,NVIDIAのほうについては,製品名は伏せられていたもののトップエンド付近の製品がまもなく新しい型番のものに置き換えられるということになっている。
また,MSIの方向性を示すものということでMXM(ノートPC用グラフィックスモジュール)を2基搭載したグラフィックスカード「Geminium Go」が展示されていた。 これは今年初めのWinter CESでも発表されていたものだが,MSIの「コンセプトモデル」である。「トヨタやホンダがモーターショウで出してるようなもの」ということで,太陽電池を搭載したノートPCやMP3プレイヤーなどとともに紹介されたものの一つだ。ちなみに,このノートPCはフル充電するのに1か月ほどかかるので実用にはならないが,MP3プレイヤーは2日で充電できるのでまだ実用的とのこと。まあ2日も待つ人はいないと思うが,それでも晴天の屋外では電池のもちが明らかに変わってくるそうだ。 ということで,MXMを2枚搭載できるというグラフィックスカードも,そもそも販売するつもりなどないものだと思っていたのだが,なんと今年末くらいには発売したいとのことだった。
MXMはノートPCのファクトリーオプション用のグラフィックスモジュール規格である。要するに,ノートPCのモデルごとに,いちいちマザーボードの生産ラインを増やさなくても,需要に応じて複数のモデルを提供できるようにするための,メーカー向け規格である。 ということで,MXMのコネクタなどは基本的に頻繁な抜き差しを考慮して規格が策定されていない。一方,ATIのAXIOMは,ユーザーが交換するところまで考慮して仕様を決めた結果,使用できるコネクタやカードエッジの原価が上がって競争力がなくなってしまったという皮肉な結果になっている。 まあ,かつてのスロットタイプのインテルCPU(Pentium IIとか)のコネクタも,仕様上の想定交換回数は30回しか考慮されていなかったのだから,ほぼ問題はないとは思われるが,微妙に不安の残る部分ではある。
今回展示されていたものにはGeForce Go 6600ベースのモジュールが2個搭載されていたのだが,発売時にはGeForce Go 7800ベースのものになるだろうとのことだった。そうなれば,クーリングシステムもこんな簡単なクーラーでは済まなくなるはずではある。今回のカードはあくまでも参考程度に考えておくとよいだろう。 また,MSIから発売されるMXM以外は動作保証対象外となる。まあ,MXMとひと口にいっても,長いもの,くの字型のものとかいろいろある。このカードに取り付けるとケースのフタが閉まらなくなりそうなものもあるので,この対応は妥当なところだろう。
さて,この製品は技術的にはかなり面白いカードではあるが,実用性についてはかなり疑問も残る。 まず,価格面。なんでもそうだが,量産効果で多く作られるほど安くなるのは当たり前で,需要が限られるハイエンドのGeFoece Goチップの価格が安いはずもなく,MXMモジュールの価格も推して知るべしだ。 次に性能面。GeFoece Goは,ノートPC用ということで,パイプライン数が制限されたりクロックが下げられてるケースが多い。通常のデスクトップ用GeForceよりも性能は下がってしまう。 当然ながら,通常のグラフィックスカード2枚でSLI構成にしたほうが安くて速いのではないかと思われる。 それでもこのような製品を出す理由は何かと尋ねたところ,静音化が狙いだという。確かに,ノートPC用ということで省電力かつ低発熱設計となっているため,SLIソリューションとしてはかなり静かなものも構築できる可能性がある。 そういえば,発表会の途中で,日本とドイツの市場の特殊性に触れられ,とくに日本市場はクレージーだと語られていた。曰く「静音化にうるさくて,しかもクロックアップを同時にやる。それでうまくいかないとクレームがくる」とのことで,そういったターゲット層に向けては有効な製品となるのかもしれない。 ただ,純粋にゲームのパフォーマンスを求めるなら,普通のグラフィックスカード2枚でSLIを組んだほうがよいだろう。 MXM方式だと将来的にアップグレード可能とはいえ,MXMモジュール上には,グラフィックスカードのコストのほとんどを占めるグラフィックスチップとグラフィックスメモリが載っているので,グラフィックスカード1枚より安くなる可能性はあまり高くない。そのうえ,選択肢が非常に狭くなる。
また,このカードを2枚使ったQuad SLIについても聞いてみたところ,「研究中」という答えが返ってきた。Quad SLIについてはドライバの問題も少なからず出てくると思われるので,正式対応版となるDellのマシンが発表されて以降でないと確認も難しいのかもしれない。理屈からいえば,できない理由はないのだが,これも技術的には面白いものの,コストパフォーマンスは微妙である。 現状では,「価格は高くなる」というMSIの発表のとおり,高価格である前提で記事を書いているが,この評価も「どれくらいの価格か?」次第ではある。具体的な製品発表を心待ちにしたい。(aueki)
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