[韓国ゲーム事情#431]野球カードバトルゲーム「魔球魔球」
Kimの韓国最新ゲーム事情#431
カードバトルシステムを採用したオンライン野球ゲーム「魔球魔球」(2005/10/28)
Text by Kim Dong Wook特派員
韓国ゲーム業界の最近のトレンドは,スポーツジャンルだ。とくに,これまでにほぼすべてのプラットフォームに投入されてきたほど,普遍的なものとして愛され続けている"野球ゲーム"は,オンラインゲーム全盛の昨今もやはり高い人気を誇っている。このあたりは,以前お伝えしたとおりだ。 そんな中,コナミとの訴訟で,さらに名を上げた(?)「新野球」と並び,韓国オンラインゲーム業界の野球ジャンルをリードするのではと目されているのが,「A3」のデベロッパであるAniParkが開発中の「魔球魔球」だ。
魔球魔球の開発には,A3のメイン開発者達を含め約20名のスタッフが,約1年間携わっている(これ以外にも三つのスタジオでオリジナルのカジュアルRPG,フットサルをテーマにしたオンラインスポーツゲーム,A3後継作を開発中)。 当初,2005年夏頃には公開される予定だったが,現在のところ,表だった動きは見えていない。そこで4Gamerでは,AniParkへの取材を行った。
まず気になるのは,やはりサービススケジュールだ。現在の予定では,魔球魔球は,CJ Internetの「Netmarble」で2005年内にクローズドβテストが行われる予定となっている(ちなみに筆者がAniParkを訪問した日には,CJ Internetの関係者も打ち合わせを行っていた)。そして,2006年初頭にはオープンβテストを行いたいとのこと。 なお現在は,ゲーム内のSHOPの構築と,SHOP内コンテンツの充実を図っているとのことなので,開発は相当進んでいるとみていいだろう。 当初の予定よりも遅れている主な原因は,(あらゆるゲーム開発に共通していることだが)開発を進めるにつれて膨らんでいく開発チームの欲であるとのこと。だがそれ以上に,単純な野球ゲームとは異なり,野球チームの運営といったマネジメント要素が盛り込まれたコンセプトを,いかにして一般のゲーマー達に理解させるかという点に,苦慮している様子だ。
AniParkのマーケティング室長Kang Hak Soo氏は,「投/打/走/守だけがコンセプトの野球ゲームであれば,プレイヤー達もたやすく受け入れてくれるでしょう。しかし魔球魔球は,選手にトレーニングをさせながら球団を運営しつつ,カードバトルで試合をするという独自のシステムを採用しています。そのため,サービス開始直後に,いかにしてプレイヤー達に興味を持ってもらうかが,大きな課題となっています」と語る。 ただ基本的には,プレイをすれば自然に覚えてもらえるだろうと予想し,その方向で戦略を練っているようだ。
ちなみにライバルといえる新野球では,"試合数を多くこなしたプレイヤーほど勝利しやすくなる" "今後販売予定の有料アイテムを購入したプレイヤーが有利になる"といった問題点が指摘されている。 こうした問題に対し,魔球魔球では,カードのランダム性を高め,プレイヤーのその日の運が勝敗に影響を与えるようなバランスに調整することで,対処するという。 また,ゲームに緊張感を持たせるために,ストライクボールだけで勝負する"真っ向勝負モード"や,2ストライク3ボールからプレイする"フルカウントモード"なども用意しているそうだ。
現実の野球は1チーム9人でプレイするが,オンラインゲームでは1人。となると,オンラインゲームで重視される"コミュニティ性"を,魔球魔球ではどのように高めていくのかが,気になるところだ。この点を魔球魔球では,トレーディングカードゲームと同様の,"カード収集欲"に求めているようだ。 自分の球団を強いチーム(強いカードデッキ)にするためには,ほかのプレイヤーと絶えず選手(カード)を交換する必要があるという。そのため,MMORPGにおけるギルドコミュニティは,本作の場合"トレーディングコミュニティ"といった形になる。 なお,このコミュニティをバックアップしプレイヤー間の自然な交流を促すため,例えば"1985年に活躍した阪神タイガースの選手カードを全部集めたら,アイテムなどをプレゼントする"といった形で,運営元は持続的なプロモーションを行うつもりとのこと。
気になる日本サービスについて前出のKang室長は,「魔球魔球の韓国内外におけるサービス権利のすべては,現在CJ Internetが持っています。そのため基本的にはCJ Internetと協議をしながら,検討していく方針です。ただその前に,まずは韓国内のサービスを安定化させる必要があります。そして準備を万端にしたうえで,野球の国である日本に進出したいと考えています。もし日本進出が決定したら,ローカライズのために少なくとも10か月は必要です。というのも,日本の球場,各チームのユニフォーム,年度別の選手データ(カードデザイン)を盛り込む必要があるためです。魔球魔球は,ほかのカジュアルオンラインゲーム以上に,ローカライズ作業が複雑だと思います。日本の野球ゲームは非常にクオリティの高いものが揃っているので,ここは万全を期したいところです」と答えてくれた。
野球ゲームは日本でも根強い人気を誇るだけに,魔球魔球が日本市場に投入されれば,大きなブームを巻き起こす可能性を秘めている。今後もこのタイトルに注目していきたい。
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