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[CEDEC 2005#02]”チャイナリスク”と中国オンラインゲーム市場
2005/08/29 23:59
■中国第2位のパブリッシャ第九城市が語る中国市場

 CEDEC 2005初日の3講目には「中国ゲーム市場の現状」と題するカンファレンスが行われた。中国の大手オンラインゲームパブリッシャ第九城市の技術諮詢 孫堅氏と,ゲームの委託開発会社トーセの中国子会社である東星軟件の総経理 千種 茂氏による中国市場分析と,自社業務の紹介がメインの内容だった。

 先に演壇に立ったのは第九城市の孫堅氏。第九城市といってもどんな会社か想像しづらい人がほとんどだと思うが,盛大(Shanda)に続く中国第二のオンラインゲームパブリッシャであり,2006年には「グラナド・エスパダ」の中国版「卓越之剣」を提供予定となっている。
 孫堅氏はまずIDCの2004年のデータを示しつつ,中国の"高度経済成長"と人口増,国内消費の充実と経済構造の改善について説明,現状で7.8%に留まっているインターネット普及率も順調に伸びていき,2008年には12%に達する見通しであることを述べた。
 そしてそれを受ける形で,2004年に24.7億元のオンラインゲーム市場は,2009年には109.6億元まで伸びるという展望を示す。一方そのときのオンラインゲーム人口は,2004年で2025.2万人に対し,2009年には5683.2万人と予測されている。

 中国におけるオンラインゲームビジネスは,1999年の「Ultima Online」のサービスから始まる。その後2001年には韓国初の中国展開タイトル「Dark Saver」,同年にはShandaによる「Legend of Mir II」のサービスも開始される。
 その後現在にいたるまで,韓国および台湾のタイトルが中国オンラインゲーム市場の主役であり続けるが,近年中国の独自開発タイトルも,軌道に乗りつつあるという。

 また,中国市場の特徴は,現在約130社あるパブリッシャのうちトップ3のシェアが68%を占めていることだという。2003年のデータによれば,1位のShandaが37%,2位の第九城市が18%,3位のNeteaseが20.6%のシェアを持つ。
 その中国市場の雄第九城市は,2000年にゲームコミュニティサービス「The 9 City」で名乗りを上げ,2004年8月31日時点で5000万人を超える登録ユーザーを誇る。また,「ミュー 〜奇蹟の大地〜」のパブリッシングのほか,最近では「World of Warcraft」の中国サービス「魔獣世界」でも知られる。加えて,同社が展開するネットカフェ用システム"Pass9"は,中国各地のネットカフェ11万5000店に導入されているという。

 続く質疑応答の内容によれば,第九城市が採用する課金システムのうち,約60%がプリペイドカード,約30%がバーチャルプリペイドシステムで,クレジットカードは5%に留まるという。
 他社を例に挙げての,中国パブリッシャとのパブリシティ支払いトラブルや,ソースコード流出問題についての質問には,「よい運営会社を選ぶこと」の大切さを強調し,先頃中国政府が打ち出したオンラインゲームのプレイ時間規制については,「世論に基づく政策であり,レベル制でなくスキル制のゲームを開発していくこと,またカジュアルゲームに力を入れていくこと」で,ディベロッパおよびパブリッシャは,ある程度影響を回避できると回答した。
 そして,「音楽映像配信に注力するShandaと異なり,第九城市はゲームにより力を入れていく」と自社の姿勢を明確に述べて講演を締めくくった。



■開発リソースとしての有望性が問われる中国

 続いて登壇した東星軟件の千種 茂氏は,開発のアウトソーシング先としての中国の有望性を強調する。「クオリティーは大丈夫なのか?」「情報漏えいの心配はないのか?」といった,いかにもな懸念事項に答える形で講演が進む。

 氏はまず,上海や北京,広州など大都市に集中する大手ゲーム企業,2万人もの需要が見込まれながらも5000人前後に留まるゲーム開発者,上海や大連で開校が相次ぐ開発者養成学校など,主に中国のゲーム開発者事情から説き起こす。
 そして,もっぱら自社の活動に沿って,前述の懸念事項に一つ一つ答えていく。トーセは1993年に上海,2001年には杭州に開発スタジオを設け,高学歴の若者を自社内の研修で育ててきたという。前述のゲーム開発者の需給関係からは,中国のゲーム開発者は流動性が高いのだろうという予測がつき,実際,そういった趣旨の質問もなされたが,東星軟件がその点で比較的安定しているのは,自前の人材育成に負うところが大きいとのことだ。

 中国でのゲーム開発に携わる氏は,中国市場での成功の鍵を地元企業との協業にあると述べる。その理由として,中国市場のニーズに合わせたローカライズ,情報源としての能力,現地対応力のほかに,中国政府の"Made in China" "Developed in China"優遇策を挙げていたのが印象的だった。中国政府は,前者には支援と奨励を,後者には配信許可の優先度をもって応えているようだ。
 そして氏は,最初に述べた中国市場の懸念要因を克服する手だてとして,「簡単なテストプロジェクトを行って開発力を確認すべきこと」「開発ツールに海賊版が使われていないか確認すべきこと」「情報管理の体制を確認すべきこと」「開発現場を視察し,現地で打ち合わせを行うことで信頼関係を築くべきこと」などを挙げる。 最後に自社の業務内容と引き比べつつ(政府の政策変更や,市場慣行の食い違いなど)「いわゆるチャイナリスクはあるものだと考えたうえでも,中国は開発リソースとして有用である」旨を述べて講演を終えた。

 質疑応答では中国におけるパッケージソフトの状況も話題に上り,「販売されているコンシューマゲームタイトルのほとんどは海賊版であり,PCパッケージソフトも海賊版と競争できる価格設定にする必要がある現状は,根付いてしまった慣習だけに誰もコントロールできない」など,なかなかショッキングな話題も飛び出した。

 比較的大きな講義室を使っていた今回のカンファレンスだが,それに見合う聴講者数であり,質疑応答でも活発なやりとりが見られたのが実に印象的だった。隣にありながらなかなか実情の見えてこない中国ゲーム市場に対する,業界関係者達の関心の高さもうかがえる一幕だったといえようか。(Guevarista)


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