NVIDIA,新世代グラフィックスチップ「GeForce 7800 GTX」を発表
GeForce 7800 GTXのロゴ
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「GeForce 7800 GTX」は,当初「NV47」,後に「G70」と改められた開発コードネームのグラフィックスチップだ。今回発表されたのは「GeForce 7800 GTX」のみで,バリエーションモデルは発表されていない。ただし,NVIDIA側も発表会の中で何度か「GeForce 7」という表現を使っていたことから,いずれバリエーション展開がなされていき,GeForce 6から置き換わっていくことは間違いない。
GeForce 7800 GTXのチップ(左)とリファレンスカード(右)のそれぞれイメージ
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■大幅なアーキテクチャ改変が行われたGeForce 7
GeForce 7800 GTXの詳細については,6月某日にサンフランシスコ市内で明らかになった。「SM3.0をさらに熟成させるのがこのGeForce 7800 GTXだ。『SM3.0"+"』? ああ,もうそういう不毛なことはやめたんだ(笑)。だから今回は「+」も「a」も「b」もなし。シンプルにSM3.0。あそこ(ATI Technologies)と差を付けるだけなら,これだけで十分だろう?」とは,NVIDIAのテクニカルマーケティング部門副社長のTony Tamasi氏の弁
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製造プロセスルールはTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)の0.11μmを採用。プロセスルール自体はGeForce 6600シリーズと同じだが,GeForce 6600と異なり,Low-kではない。 総トランジスタ数は実に3億200万で,常識破りだったGeForce 6800 Ultraの2億2200万から,さらに約1億トランジスタの規模拡張が行われたことになる。一方,コアの動作クロックは430MHz。GeForce 6800 Ultraの400MHzから,わずか30MHzの上昇に留まっている。 グラフィックスメモリバスはGeForce 6800 Ultraから据え置きの256ビット。組み合わせられるグラフィックスメモリは動作クロック600MHz(1.2GHzデータレート)のGDDR3 SDRAMである。 頂点シェーダを内包する頂点パイプラインの本数はGeForce 6800 Ultraの6本に対して8本に拡張されている。ピクセルシェーダを内包するピクセルレンダリングパイプラインの本数もGeForce 6800 Ultraの16本に対して24本と,1.5倍に増強された。しかも,各ピクセルシェーダでは内蔵の積和算器が倍増されており,1.5倍となったパイプライン本数と相まって「GeForce 7800 GTXは,同クロック換算でGeForce 6800 Ultraの3倍(1.5×2)のシェーダ性能を持つ」とNVIDIAは説明する。 GeForce 7800 GTXのインタフェースはPCI Express x16ネイティブ。AGP版は今回発表されていない。AGP版登場の可能性については「我々のPCI Express−AGPの相互変換チップ『HSI』(High-Speed Interconnect)を利用すれば,技術的には可能」だそうだが,具体的なスケジュールに関しては触れられなかった。
GeForce 7800 GTXのブロックダイアグラム(左)。GeForce 6800 Ultraのブロックダイアグラム(右)と比較するとよく分かるが,頂点とピクセルのパイプライン数の増強が一番大きな変更点である
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前述したように,プログラマブルシェーダアーキテクチャとしてはSM3.0に据え置かれたGeForce 7800 GTX。だが,これらパイプラインの増強や細かい拡張が行われたことにより,NVIDIAはGeForce 6シリーズの「CineFX 3.0」から一歩進めて,GeForce 7800 GTXのアーキテクチャ名を「CineFX 4.0」と呼んでいる。
左:NVIDIAは新型グラフィックスチップの投入に合わせて,必ず新しいテクノロジーデモも一緒に公開する。これは「Luna」と名付けられた女性キャラクターが登場するGeForce 7800 GTXのテクノロジーデモだ。今回の"デモ美女"は東洋系。表面下散乱(人間の肌などに当たった光の,反射・透過・屈折を割合として正しく処理する技法)をシミュレートしたスキンシェーダが見どころだ
右:こちらはGeForce 7800 GTXのテクノロジーデモ「Mad Mod Mike」のワンシーンから。動的に生成した環境マップからイメージベースド・ライティング(Image Based Lighting,テクスチャを光源と見なす陰影処理)を行って1次反射までの大域照明を疑似的に再現する
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GeForce 7800 GTXでは,アンチエイリアス(以下AA)処理にも改善が見られる。このエンジンもGeForce 6の「IntelliSample 3.0」から「IntelliSample 4.0」とバージョンが上がっているのだ。 地面に草が生えていたり,金網が重なっていたりする場合――つまり,透明テクセルを持つテクスチャの貼られたポリゴンが複数レイヤーで重なって表示される場合――従来のAA処理では情報が欠落するばかりで,正しいAAが実現できなかった。この点IntelliSample 4.0では,透明度に配慮したマルチサンプル処理を行うことで,この問題を解決したという。また,IntelliSample 4.0エンジンは,ATI TechnologiesのRadeonが持つ「3Dc」相当の法線マップ圧縮メソッドまでサポートするとしている。
左がGeForce 7800 GTX,右がGeForce 6シリーズによる映像(「ハーフライフ2」の冒頭シーンより)。金網は1枚の板ポリゴンに格子状の針金模様の描かれたテクスチャを貼ったもので,針金以外の部分は透明テクセルである。この場合,GeForce 6では,透明で見える部分の向こう側の景色が正しくAA処理されていない。一方,IntelliSample 4.0エンジンベースのGeForce 7800 GTXでは,こうした問題が起きないのが分かるだろう。適応型マルチサンプリングAA処理のアルゴリズムを賢く改善した……というイメージだろうか。
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単にプロセスをシュリンクさせたリファイン版ではなく,物理的なパイプラインを増やしているあたりに,NVIDIAの「本気とやる気」が感じられる。確かに,フルモデルチェンジではないが,ビッグマイナーチェンジと呼ぶに相応しいアーキテクチャの改変とは言えるだろう。このようなアーキテクチャ改変は,GeForce 3(NV20)に対するGeForce4 Ti(NV25)を彷彿とさせる。
■PureVideoはH.264デコードアクセラレーションをサポート
GeForce 6800 Ultraで初めて搭載されたプログラマブルビデオプロセッサ(Programmable Video Processor,以下PVP)は,GeForce 7800 GTXでも搭載される。PVPそのものの機能はGeForce 6800 Ultraとほぼ同一のようだ。したがって,PVPによって実現されるビデオアクセラレーション&映像高品位化機能である「PureVideo」は,GeForce 7800 GTXでも当然利用できる。
なお,Blu-rayやHD DVDの映像フォーマットとして採用が決定している「MPEG4-AVC/H.264」形式(以下H.264)のデコードに対応したPureVideoを2005年12月ごろに提供すると,NVIDIAはアナウンスしている。現在NVIDIAは,CyberLinkやInterVideoと共同で,PureVideoがH.264のデコードアクセラレーションを実現する仕組みを開発中という。近い将来,「PowerDVD」や「WinDVD」などのDVDプレイヤーソフトの将来バージョンで,PureVideoによるH.264アクセラレーションを利用できるようになるのではないだろうか。
■GeForce 7800 "Ultra"はどうなる?
リファレンスカードの基本仕様。16Mx32仕様のメモリチップを組み合わせた,容量512MB搭載版登場の可能性もある
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GeForce 7800 GTXチップの歩留まりはすこぶる良いらしく,GeForce 6800 Ultraのように出荷量が極端に少なくなることはないという。搭載カードは即日出荷されるので,今月中には店頭で見かけるようになるそうだ。店頭販売予想価格は599ドルとのこと。
気になる消費電力と発熱に関しては,別途ベンチマーク記事(「こちら」)で検証しているので,ここでは簡単に触れるに留めるが,NVIDIAは「チップ規模が増大し,動作クロックも若干上がっているが,プロセスルールが0.11μmへシュリンクした効果で,ピーク時の総消費電力はGeForce 6800 Ultraよりも下がっている」という。実際,GeForce 7800 GTXは熱設計面で改善を見ているようで,リファレンスカードのチップクーラーは1スロットタイプになっている。
ここ最近のハイエンドGeForce製品としては久々のシングルスロットデザインとなったのだ。
最後に,読者の中には,「7800 "Ultra"は出ないのか?」という疑問を持つ人も少なくないだろう。このあたりの話題や,より深いGeForce 7800 GTXアーキテクチャについては,3Dゲームエクスタシーの連載で触れたいと思う。(トライゼット 西川善司)
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