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[COMPUTEX 2005 ♯07]ATI,「CrossFire」技術の詳細を発表
2005/06/03 21:16
■「またしてもATIが勝利してしまった」

高らかに勝利宣言を行う,ATIの副社長兼デスクトップビジネスユニットゼネラルマネージャ,Rich Heye氏
 ATI Tchnologies(以下ATI)が推進する,ビデオカード2枚差しによるハイエンドソリューション「CrossFire」。この語は元来,十字砲火を意味する。壇上に立ったATI の副社長兼デスクトップビジネスユニットゼネラルマネージャ,Rich Heye氏は「ATIのRADEON X850シリーズおよびX800シリーズは,世界最速のビデオカードとして世界中の3DゲームユーザーやPC愛好家に認知されている。今回,我々が発表する技術は,もう1個のRADEONを同時に動かして,そのパフォーマンスをさらに加速させるものだ。あちら(注:NVIDIA)には申し訳ないが,また我々が勝ってしまうことになった」と述べた。

写真左:CrossFireのロゴ。「Command&Conquer」のもじりか,キャッチコピーは「MULTIPLY&CONQUER」となっていた。和訳すると「増やして勝つ」
写真中:「PCI Express ×16ビデオカード市場で一番売れているのはATI。2枚差しでも計算上は当然そうなる」とは,ATIの社長兼CEO,Dave Orton氏の弁
写真右:ROOM18はかなり暗かったので,このカットはATIブースで撮影。RUBYのコスプレをした美女がバイクにまたがってポーズを決めてくれた


 CrossFireによって実現されるのは,以下の4点だという。

(1)究極の3D性能:理論値で2倍
(2)究極の描画品質:カード1枚時に対して2倍のアンチエイリアス描画品質を,速度低下なしで
(3)究極の互換性:3Dアプリケーションのタイプを選ばず,確実にパフォーマンスが向上
(4)究極の柔軟性:ビデオカード1枚のシステムを,簡単かつ制限なしで2ビデオカード仕様へアップグレード

 詳細は改めて解説したいと思うが,ひとまず順番に見ていく。まず(1)について。CrossFireでは3タイプのレンダリングモードを使い分けることで,性能の向上を図っている。交互に表示フレームをレンダリングする「Altanate Frame Rendering」モード,32×32ピクセルの固まりを交互にレンダリングしていく「SuperTiling」モード,画面を上下に分けてレンダリングする「Scissor」モードがそれだ。
 (2)は「Super AA」と呼ばれているもので,NVIDIAの「NVIDIA SLI」にはないオリジナルの設定だ。CPUがボトルネックとなるようなゲームタイトルでは,CrossFireだろうがそのほかの描画ソリューションだろうが,パフォーマンスは向上しない。ならば,あり余るビデオチップのパワーをアンチエイリアス処理に使おうというわけである。続けて(3)だが,これは単に,NVIDIA SLIと比べてビデオカード2枚利用時のレンダリングモードが一つ多いぶん,CrossFireの方が対応範囲が広い……ということを言っているだけだ。

ATI提供のCrossFire関連資料から一部抜粋。左はタイリング描画で二つのビデオチップに処理を分散してレンダリングを行うSuperTilingモード,中央はScissorモードの動作概念を示したものだ。右では,CrossFireにおいて二つのビデオチップを画質向上に利用するモードの説明。最大14xのフルスクリーンアンチエイリアシング(FSAA)をサポートすると述べている


■旧来のRADEON X850,X800カードとの組み合わせも可

Compositing EngineとCrossFireの動作概念。ちなみにこれもATI提供資料からの抜粋である
 (4)については,もう少し詳しく触れておこう。CrossFire動作を実現するためには,以下の要件を満たす必要がある。

(a)"CrossFireコントローラ"とでもいうべき「Compositing Engine」チップが搭載された,RADEONシリーズ搭載ビデオカード。これがマスターカードとなる
(b)セカンダリカードとなる(既存の製品を含む)RADEON X850/X800シリーズ搭載ビデオカード
(c)PCI Express x16カードをPCI Express x8接続で2枚同時に利用できる「CrossFire認証」されたマザーボード
(d)CrossFireをサポートするCATALYSTドライバ

 ここで注目したいのは(b)だ。これは,2枚のカードの動作クロックやビデオメモリ容量が,とくに同じである必要はないことを意味する。そこがNVIDIA SLIとの最大の違いだ。カードメーカーに気を遣っているのか,ATIもあまり大きな声では言っていないが,2枚のビデオカードは別々のメーカーのものであっても,問題なく動作させられるという。
 また,アーキテクチャさえ同じなら,レンダリングパイプライン数が異なっていてもかまわない。例えばパイプライン16本のRADEON X850 XTと,同12本のRADEON X800 PROを組み合わせることも可能なのだ。ただしこの場合は,よりグレードの低いビデオチップでCrossFire動作する。つまり,この例ではRADEON X800 PRO×2として動作するわけである。


■柔軟性は高いが導入コストに難アリか

 非常に自由度が高く魅力的なCrossFireだが,重大な弱点もある。それは(c)だ。CrossFire動作をさせられるのは,基本的にATI製の統合チップセット「RADEON XPRESS 200 CrossFire Edition」を搭載したマザーボードだけである。RADEON XPRESS 200 CrossFire Edition搭載マザーボードは,これから夏にかけてIntel/AMD製CPU向けに出荷される見込みだ。Intel製チップセット搭載マザーボードでもCrossFireを実現できるようにする予定はあるようだが,時期に関しては明言されていない。
 要するに,今RADEON X850/X800シリーズのビデオカードを所有しているユーザーが今後CrossFireを実現するには,以下2製品の新規購入が必要不可欠となる。

1.RADEON XPRESS 200 CrossFire Edition搭載マザーボード
2.Compositing Engine搭載のRADEON X850/X800ビデオカード

 「CrossFireは柔軟性の高いアップグレードパス」とはATIの主張だが,半面それなりのコストがかかるのだ。

MSIはGrand Hyatt Taipeiに設けていたVIPルームで,RADEON XPRESS 200 CrossFire Edition搭載マザーボード「RD480 Platinum」を展示していた。チップセットの型番はノースブリッジがRD480,サウスブリッジがIXP450


■CrossFireのパフォーマンスはNVIDIA SLIをしのぐ?

ATIはその資料の中で,一般的な3Dゲームのパフォーマンステストにおいて,CrossFireソリューションはNVIDIA SLIの上を行くとアピールしている
 気になるのは実際の性能だが,ATIいわく「ほぼすべての3DゲームでGeForce 6800 Ultra×2のNVIDIA SLIより高いパフォーマンスになる」とのこと。Futuremarkに寄せられる「3DMark05」スコアランキングでは,オーバークロック動作のGeForce 6800 Ultra×2 NVIDIA SLIの1万4000超がこれまでの最高記録だった。これに対し,RADEON X850XT Platinum Edition×2のCrossFireでは1万5000超をマークしたという。
 具体的な発売時期だが,RADEON X800/850シリーズのCrossFire Edition搭載ビデオカードは,早ければ7月にも登場するとのこと。さるビデオカードメーカーの担当者は,7月に次世代RADEONの発表がウワサされているので,この影響を考えて発売時期を早めたり遅らせたりする可能性があると,話してくれたことも付記しておきたい。なお,簡単なスペックとカードの予想価格は以下のとおりだ。

■RADEON X850 CrossFire Edition
16ピクセルレンダリングパイプライン,コア520MHz,メモリ1080MHz,ビデオメモリ256MB,予価549ドル
■RADEON X800 CrossFire Edition
16ピクセルレンダリングパイプライン,コア400MHz,メモリ980MHz,ビデオメモリ256MB,予価299ドル
■RADEON X800 CrossFire Edition
16ピクセルレンダリングパイプライン,コア400MHz,メモリ980MHz,ビデオメモリ128MB,予価249ドル

 ATIとNVIDIAとの争いは,ついにビデオカード2枚差し市場まで波及することになった。CPUのデュアルコア化と相まって,今年はCPUもGPUも"デュアルが熱い"ことになりそうだ。(トライゼット 西川善司)


ATI Radeon X800
■開発元:AMD(旧ATI Technologies)
■発売元:AMD(旧ATI Technologies)
■発売日:2004/05/11
■価格:製品による
→公式サイトは「こちら」

【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/news/history/2005.06/20050603211659detail.html