[E3 2005#085]「Iron Storm」の未来を描いたFPS「Bet on Soldier」
SLIの技術デモをメインとして,今年も数々のPCゲームが協賛メーカー製のPCと共に展示されているNVIDIAブース。複数のPCを接続して対戦環境を構築していた「Battlefield 2」が人気を博していたのはさておき,そのほかにもテクノロジーデモ向きのシューティングタイトルがいくつか展示されていた。
中でも目を惹いたのは,フランスのデベロッパKylotonn社の「Bet on Soldier」(以下,BoS)だ。 本作は,知る人ぞ知るFPS「Iron Storm」のクリエイターが携わっている。ストーリーもIron Stormと同様に,"もし第1次世界大戦が続いていたら……"という歴史のifを描いたものだ。 時代設定は2025年という近未来で,戦争が宗教的な対立や種族間の抗争,また利害の追求手段ではなく,一般の"娯楽"と化しているという世界観が,本作の特徴。これは二つの巨大な連合が,戦争をビジネスのように扱い始めことに端を発する。 これら連合の従業員は,いわゆる"傭兵"の扱いであり,兵士として敵を殺した数で報酬が決まる。しかしその収入は決して満足のいくものではなく,こういった不平を改善するために,連合は「Bet on Soldier」(軍人に賭けろ)というプログラムで,戦争で活躍した兵士がより多くの利益が得られるような枠組みを作り上げたわけだ。「ベテラン兵士に適正な収入を,そして労働者階級にスポーツを提供する」というスローガンが,本作の世界観のすべてを表している。
本作には,同社が6年かけて研究/開発したKtエンジンが使用されており,近未来らしくゴツゴツとしたアーマーを着込む兵士や,岩肌がむき出しになり,ところどころに金属片が散乱する荒廃したこの世界を,美しく描いている。 荒れ果てた市街地には,あちこちに(未来だから分からないけど)鉄筋が飛び出て崩れかかったビルがある。錆びた鉄の表現や,曇り空で全体にじっとりと暗い本作の雰囲気は,THQのFPS「S.T.A.L.K.E.R.:Shadow of Chernobyl」に近い。ただBoSは"戦争"を描いた作品なので,基本的には大規模な戦闘となり,プレイヤーも場合によっては,AI制御の友軍兵士を率いたスクワッドベースの操作をする必要がある。
金銭にシビアな本作の世界観はそのゲーム性にも影響を与えており,戦闘で敵を倒しても武器,弾薬,医療キットなどのアイテムは一切出現しない。こういった装備品は,マップの要所に配置されているターミナルで購入する。つまりすべてをお金で解決するわけだ。また本作には戦争用ロボットのような兵器もある。これはE3 2004時にはなかった要素であり,大規模な戦闘などで奪い合いになるようなシチュエーションもありそうだ。
実は以前E3 2004で本作を見たとき,サクサクと小気味良く対戦できる本作はマルチプレイモードがメインとの印象をもったが,スタッフの話を聞く限りは,どうやらシングルプレイに主眼を置いて制作されているらしい。公式サイトなどのムービーを見て,最大32人のマルチプレイを楽しみにしていた人には,ちょっと残念な報告だろう。
本作は,ヨーロッパ特有のしっとりと暗い,いかにもPCゲーム然とした世界観にも関わらず,マルチプラットフォーム戦略でコンシューマ機への移植も考えているとのこと。現在は汎用的な物理エンジンを実装しているが,間もなく適用されるパッチで,その部分もごっそり自前のエンジンに切り替わる。これもマルチプラットフォームを見据えてライセンス料金を抑える施策なのだろう。
本作は,2005年11月にDigital Jestersより発売予定。現段階では手放しでお勧めできないが,シンプルで軽快なプレイフィールから,ある程度のクオリティを確保した完成形は想像できる。FPSファンなら,チェックリストに名前を追加しておく価値はあるだろう。(Gueed)
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