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[E3 2005#013]「Max Payne」の開発元が手がける心理サスペンス「Alan Wake」
2005/05/19 18:18
 「Max Payne」で有名になったRemedy Entertainment社の新作は,その名を「Alan Wake:A Psychological Thriller」といい,Max Payneと同様に主人公の名前が冠されている。
 Max Payneシリーズは,"Payne"(Pain)というタイトルが示唆するように,目の前で妻が殺されて心に傷を負った男を描いたドラマだった。もちろん"Wake"だって何か深い意味があるようで,このゲームのストーリーのテーマは,"睡眠"や"光と闇"である。



リードデザイナのヤーヴィレト氏(左)と脚本のレイク氏
 E3会場で行われた特別なプレスデモにおいて,Max Payneシリーズでもリードデザイナーを務めていたペトリ・ヤーヴィレト(Petri Jarvilehto)氏は,「今回はテクノロジデモだけですが,ご覧のように実際に動かしています。ただし,リリース予定日はおろか発売元も決まっておらず,これを紹介した後は,しばらく新しい内容を公開するのを差し控えるつもりです」と話した。
 今回のデモでは敵がほとんど登場せず,ゲームプレイやテンポが理解できるほどのアクションは見られなかったが,Remedy Entertainment独自のゲームエンジンによるグラフィックスには,並々ならぬ性能が秘められていることはよく分かった。

 Alan Wakeのストーリーは,ワシントン州にあるという架空の田舎町を舞台にしている。アメリカ映画ではよく見られる道路脇の緑の標識には,「ブライトフォールズ 人口2,000」と書かれている。アランは,仕事も恋愛もうまくいっていた気鋭のホラー小説家だったが,一つ大きな秘密を持っていた。彼の書く小説は,彼が睡眠中に悩まされていた悪夢を題材にしていたのである。
 ところが愛していたフィアンセが失踪してしまったことから不眠症に陥り,そんな不安定な状況を打破するために都会を離れ,この地方へと流れてきた……というのが,Remedy Entertainment社のライターであるサム・レイク(Sam Lake)氏の説明である。 このアランは,妻に似た女性と遭遇したことから再び悪夢を見るようになり,やがてその悪夢と現実が交差するようになるのである。

 このゲームの雰囲気は,デイビッド・リンチの「ツインピークス」やスティーブン・キングの各種スリラー小説を下敷きにしているようだ。レイク氏は,「その世界の雰囲気やムードといったものは,スリラーにとっては非常に重要な要素です。このゲームでも,ストーリーを通じて同じ世界観で統一されるようにしています」と説明する。
 確かに,湖畔に面したさびれた町の様子はうまく再現されており,ガソリンスタンドや教会,小さな警察署,雑貨店,湖岸の波止場などが実に細かく描かれている。風が吹くと落ち葉が舞い上がるのが哀愁を誘うが,この風と落ち葉はゲームエンジンで調整できるらしく,嵐になれば画面上は緑や茶色の葉っぱで覆われるほどまでになった。
 Alan Wakeのマップは非常に広く,湖を取り巻く山々や,そこに生える針葉樹林,そして谷間を縫うように敷かれた道路や道路脇のオブジェクトなども描き込まれている。ヤーヴィレト氏が,「画像を綺麗にするだけでなく,ストーリーやテーマに沿った世界になるように,プレイヤーが自由に行き来できる広大なマップを作る努力も重ねています」と説明するように,このゲームは「Grand Theft Auto」のようにミッションベース。それを達成しようがしまいが,好きな場所に行けることになるようだ。
 実際には,町の人々がそれぞれの生活や日常習慣に沿った行動をしており,道路には車が走っていたり野生動物も出現したりするとのことだが,今回のα版デモではまだプログラミングされてはいなかった。



 さらにAlan Wakeでは,ダイナミックライティングによって,太陽光と,それが遮られてできる影が大きなポイントとなっている。太陽の動きに合わせてすべてのオブジェクトの影がソフトに伸び,朝霧では木々の木漏れ日も線上に透過されて幻想的なイメージを作り出す。夕方には,遠方の山の影が湖面をなめるようにジワリと伸びてきて,やがて町を覆いつくすのである。
 先に書いたように,このゲームでは"闇"も重要な要素になってくる。アランが夜に眠ってしまうと,闇から魔物が襲い掛かってくるからである。そのため,ゲームでは光が重要な護身用具となっており,万一光のある場所に避難できないまま眠気が指すと,プレイヤーキャラクターは危険な状態に置かれることになる。フラッシュライト,車のフロントライト,果ては湖畔の灯台まで,利用できるものは何でも利用するのである。
 ゲームデモの最後は,夕暮れの中をヤーヴィレト氏の操作するアランが車で爆走する場面だった。ある程度進むとムービーシーンに切り替わり,何とか山陰に包まれる前に灯台に到達したアランが,日没とレースするように崩れかけた桟橋を駆ける。しかし,灯台の入り口には鍵がかけられており,光が消えたのを悟ったアランは,失望で崩れ込むように座り込んでしまう。そして,カメラが桟橋に沿ってズームアウトしていくと,さっきまではいなかったローブに身を包んだ数人の魔物が立っているのだった。
 主人公の心情を十分に察することができるほど秀逸なイベントで,逆に魔物に悩まされながらも無事に夜が明けたときは,必ずプレイヤー自身が安堵するはずだ。
 今後の開発では,昼夜の観念だけではなく天候の移り変わりも表現できるようにするとのことで,冬が近づくに連れて夜が長くなったり,落ち葉で道が覆われたり,あたりが雪に覆われたりという自然現象も見られるのかもしれない。

 まだまだ実際のゲームには程遠いものの,もし今回のデモで紹介されたことが実現できれば,Remedy Entertainment社はエースのカードを手中にしていると考えて間違いない。パブリッシャが決まれば続報もあるだろうから,(それがいつになるのかは分からないが)楽しみに待っていよう。(奥谷海人)


Alan Wake: A Psychological Action Thriller
■開発元:Remedy Entertainment
■発売元:Microsoft Game Studios
■発売日:2007年内
■価格:未定
→公式サイトは「こちら」

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http://www.4gamer.net/news/history/2005.05/20050519181848detail.html