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ついに次世代Xboxがお披露目に「Xbox 360」発表会レポート
2005/05/13 20:59
 マイクロソフトは本日(5月13日),東京は港区の六本木ヒルズで開催した「次世代 Xbox プレビュー」で,同社が開発中の最新コンシューマゲーム機「Xbox 360」(エックスボックス サンロクマル)を発表した。価格は未定。発売日は日本と欧米で2005年中とのこと。

 この日,六本木ヒルズの「VIRGIN TOHO CINEMAS 六本木ヒルズ」(編注:映画館)では,MTV(ミュージック テレビジョン)のワールドワイドネットワークを通じて一般向けに放映される特別番組「次世代 Xbox プレビュー・スペシャル」のダイジェスト版の公開と,同社の最新ゲーム機「Xbox 360」の発表が行われた。

 この特別番組は,全米とアジア太平洋地域および,ヨーロッパのMTVチャンネルの24時間枠内でほぼ同時にXbox 360を披露するという,ゲーム業界初の試み。5月12日の東部夏時間午後9時30分から北米で,日本国内では本日(13日)の11時30分より放映された。ホストは映画「ロード・オブ・ザ・リング」でお馴染みのイライジャ・ウッドで,そのほかにも,ハリウッドスターやプロスポーツ選手など,多くのセレブを集めて収録された豪華な内容だ。

 会場で番組が放送されたは30分弱。その後,マイクロソフトのXbox事業本部長,丸山嘉浩氏によって,一般の前に初めて「Xbox 360」が公開された。以下に,外観の写真と本機の基本仕様を記載しておこう。



【Xbox 360基本仕様】
日本語カナ読みエックスボックス サンロクマル
IBM PowerPCカスタムCPU3.2GHz 対称型3コア
各コア2スレッド,合計6スレッド
各コアにVMX-128ベクトルユニット,合計3ユニット
各スレッドに128個のVMX-128レジスタ
1MB L2キャッシュ
CPU ゲーム演算性能90億内積処理実行 / 秒
ATI カスタム グラフィック プロセッサ500MHz
10MB内蔵DRAM(EDRAM)
シェーダパイプラインへ動的に割り当て可能な,並列48基の浮動小数点演算器
統合型シェーダアーキテクチャ
ポリゴン描画能力5億トライアングル / 秒
ピクセルフィルレート16GBサンプル / 秒,4xMSAA使用時(マルチサンプルアンチエイリアシング)
シェーダ演算性能480億回 / 秒
システムメモリ512MB GDDR3 RAM
700MHz DDR
UMA(統合型メモリアーキテクチャ)
メモリ帯域メインメモリ 22.4GB / 秒
EDRAM 256GB / 秒
フロントサイドバス 21.6GB / 秒
浮動小数点性能(システム全体)1Tフロップス
記憶装置ハードディスク 20GB(取り外し,アップグレード可能)
DVD-ROMドライブ 12倍速(2層対応)
メモリユニット 64MB(発売時)
I / O4台のワイヤレスコントローラに対応
USB2.0端子×3
メモリユニットスロット×2
オンライン対応Xbox Live機能
イーサネット端子内蔵
ワイヤレスLAN(802.11a,b,g)対応(オプション)
ビデオカメラ対応予定
デジタルメディア対応対応メディアフォーマット DVDビデオ,DVD-ROM,DVD-R/RW,DVD+R/RW,音楽CD(CD-DA),CD-ROM,CD-R,CD-RW,WMA CD,MP3 CD,JPEG Photo CD
携帯音楽プレイヤーやデジタルカメラ,WindowsXP対応PCに保存されているデータの再生
Xbox 360ハードディスクへの音楽の取り込み
すべてのゲームで使用可能なカスタム再生リスト
Windows Media Center Extender機能内蔵
音楽再生時の視覚エフェクト
ハイビジョンゲーム対応すべてのゲームでワイド画面(16:9),D4(720p)およびD3(1080i)表示,アンチエイリアシングに対応
ハイビジョンビデオ出力
標準ビデオ映像出力
オーディオサラウンド音声出力対応
48KHz 16ビットオーディオ対応
同時にデコードできる音声チャンネル 320
32ビットオーディオ処理
同時発音数 256以上
設置方法縦置き,横置きに対応
交換可能なフェイスプレートカスタマイズ可能(オプション)


 Xbox 360のベースカラーは白。筐体は基本縦置きで,横置きも可能。正面から見ると左右の中央部分がへこむように"くびれ"ており,現行のXboxと比較するとかなりスリムになった印象だ。筐体下部にでんと構える円形の電源ボタンは,日本チームのアイデアによってボヤッと緑色の光を放つ仕様。筐体のデザインはともかく,当たり前のようにワイヤレス対応しているコントローラパッドに,期待感を高められる。ちなみにフロントのパネル部分(スタイルフェイス)は好みのデザインに取り替えることもできる。携帯電話などのように"着せ替え"が可能なのだ。

 丸山氏によると,Xbox 360には以下の三つのコンセプトがあるという。

 (1)Always Connected
 (2)Always Personalized
 (3)Always Hi-Difinission


 これは,(1)常時接続環境で遊べて,(2)個人用にカスタマイズが可能で,(3)ハイスペックなハードウェアを提供するということだ。
 とくに(1)は,Xboxのウリの一つであるネットワーク機能「Xbox Live」に関連した重要なコンセプトだ。
 Xbox 360では,現行のXbox Liveを継続的に発展させて「Xboxガイド」「ゲーマーカード」「ゲーマープロファイル」「マーケットプレイス」(オンラインショップ)「ビデオチャット」といった機能を追加していくという。実際にXbox Liveでどういったことが可能になるのかについては,同社の丸山氏は「しかるべき時期に発表する」と口を閉ざしたまま。ただし「無料のサービスがあることだけは確か」との話はあったので,Xboxの既定サービスとして,プレイヤーが低いハードルでオンラインゲームを楽しむ方法は考えられているようだ。

 またXbox 360の大きな特徴はWindows PCベースでの開発であり,さらに現行Xboxの開発ノウハウを活用できるという部分。つまりPCとXbox両方のデベロッパが,これまでの経験をすべてXbox 360タイトルの開発に生かせるわけだ。

 話を日本に限定すると,今後多くの国内Xbox 360参入パブリッシャが,数少ないであろう日本のXboxデベロッパの獲得競争に乗り出すはず。また一足先にXboxの開発ノウハウを蓄積している韓国のデベロッパと共同開発するなど,国内外の小さな開発会社にもスポットが当たりそうな雰囲気だ。

 さて,この日のメイントピックはあくまでも"Xbox 360お披露目"だが,おそらく(筆者を含めて)多くの来場者は,新作タイトルの発表部分を興味深く見たことだろう。

 デベロッパとして本プレビューに参加したのは,ゲームリパブリック代表取締役CEOの岡本吉起氏,キューエンターテイメント代表取締役チーフクリエイティブオフィサー水口哲也氏,そしてミストウォーカーCEOの坂口博信氏だ。
 丸山氏は,Xbox 360について「"日本の成功なくして,Xbox 360の成功とは言えない"というのが,マイクロソフトの考えだ」として,期待のかかる各デベロッパの代表者を紹介。各氏は同社の意気込みと共に,早くも開発タイトルについての情報を明かしてくれたので,以下に掲載しておこう。

【ゲームリパブリック】
開発タイトル:未公開(2タイトル)
発売予定日:未定 ジャンル:パーティゲーム,アクションゲーム

「シリーズものの多いなか,新しいモノを作りたい」(岡本氏)

 CEOの岡本氏は,コナミやカプコンといったコンシューマ大手企業でイラストレータやプロデューサー業を歴任してきた人物。ゲームリパブリック自体は,2003年に設立された新興のデベロッパだが,すでに第1作となるプレイステーション2用ソフト「GENJI」などを発表している。アクションゲームにこだわりを見せるデベロッパである。
 Xbox 360での開発タイトルは2本で,内容は未定。氏自ら「私らしくないかもしれないが……」という前置き付きの"パーティゲーム"と,アクションゲームを開発中で,Xbox 360の印象は,「ハードのスペックに幅があり,あらゆるジャンルに対応できる。作り易い」といった感じらしい。期待を"いい方向に裏切る"という氏の言葉が印象的だ。

ゲームリパブリックCEO岡本氏


【キューエンターテインメント】
キューエンターテインメントCOO 水口氏
開発タイトル:「Ninety−nine Nights」(ナインティナイン・ナイツ)
発売予定日:未定 ジャンル:ファンタジーアクション(仮)
開発元:キューエンタータインメント / ファンタグラム

「新しい技術(Xbox 360)は,新しいインスピレーションを与えてくれる」(水口氏)

 次に登壇したのは,2003年にセガを退社後,フリーのプロデューサー業を経て,現在キューエンターテインメントの代表取締役を務める水口哲也氏。「スペースチャンネル5」や「Rez」などのプロデューサーといえば,ピンとくる人も多いだろう。
 冒頭で「今年40歳になって,体力が……」などと話していたが,現在も氏はバリバリの現役。アーケード畑でセガラリーなどを手がけてCGの進化を体験し,その後"音"にスポットを当ててゲームを開発してきた氏は,「新しい技術をいかにゲームに取り込むか」という部分をいつも意識しているという。

 現在開発している「Ninety−nine Nights」は,「大軍勢」を操作する戦術面と,キャラクターの豪快なアクションが楽しめるゲーム。公開されたイメージムービーでは,西洋風の鎧をまとったキャラクター達が,「三国無双」よろしく暴れ回るというビジュアルが見られた。「大軍勢」感を最も重要視しているほか,プレイヤーが,一つのシチュエーションを複数のキャラクターで体験できる「マルチアングルシナリオ」なども,本作の見どころである。

 また個人的に驚いたのは,韓国で「Kingdom Under Fire」などを手がけたファンタグラム社(Phantagram)が共同開発社となっていたことだ。
 ここ数年PCゲーム業界的には大きく取り上げられなくなったが,Kingdom Under FireのXbox版開発などでコツコツと実績を作っているデベロッパである。ファンタグラムのCEOサンユン・リー氏は,「1画面に最大2000体,できれば3000体ぐらいを表示できるように作っている」とのこと。昨今トレンドとなっている,大規模なアクション活劇が期待できそうだ。

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【ミストウォーカー】
左から,重松氏,井上氏,坂口氏
開発タイトル(1):ブルードラゴン(BLUE DRAGON)
発売予定日:未定 ジャンル:RPG
開発元:ミストウォーカー / アートゥーン

「どこに触ってもやたらと"反応する"ゲーム」(坂口氏)

 この会で(個人的に)最も盛り上がったのは,坂口氏のタイトル発表である。
 まず1タイトルめは,制作総指揮坂口氏,音楽はFFシリーズで坂口氏とタッグを組んできた作曲家,植松伸夫氏,そしてキャラクターデザインは"あの"鳥山明氏という,ある意味"夢"ともいえる組み合わせで開発中のRPG「ブルードラゴン」だ。

 本作は"影"をテーマにした物語となっており,自分の影が突然魔物になってしまった少年シュウが,幼馴染みのジーロ,クルックと共に冒険に旅立つというもの。当然彼らの武器は"影"で,この影を職業やスキルの用に切り替えて(影チェンジというらしい),立ちはだかる敵と戦う。

 坂口氏は,Xbox 360の高度な物理シミュレーション能力や,影や煙といったエフェクトの生成能力を最大限に生かすとしながらも,やはり鳥山明氏のデザインが見どころだという。

 この日鳥山氏は来場しなかったが,"名古屋で描いた"というイラストとメッセージで,"もし(ブルードラゴンが)ドラゴンクエストと似ていれば,この依頼を断っていたであろう"ということ,そして"作っていてワクワク感がないとダメなんです"といった内容を短い文章にしたためていた(「ドラゴンボールにドラゴンクエスト,そして今度はブルードラゴンと,よほど私はドラゴンに縁があるようです」という冒頭の一文が面白かった)。

 上映されたムービーは,少年の足元にある影からビヨーンと伸びる魔物が,少年とまったく同じ動作で突きやチョップを繰り出し,最後に炎を吐くというシーンを収録したもので,植松氏が「ポップ」をキーワードに作ったという軽快なBGMが抜群に"ハマっていた"のが印象的だ。かつてドラゴンボールをリアルタイムで見ていた筆者などは,今回あらためて鳥山氏の描いた"動くキャラクターにワクワクさせられた。今回鳥山氏はプロット作成の段階からアイデアを出しているとのことなので,物語にも氏のテイストが感じられるのだろうか。

 ちなみに開発は,Xboxタイトルの"Blinxシリーズ"を手がけたアートゥーン。すでにスタッフは開発に全力疾走しているらしく,次々と届く鳥山氏のイラストや植松氏のBGMに都度感動しながら,作業を行っているそうだ。

開発タイトル2(2):ロストオデッセイ(LOST ODYSSEY)
発売予定日:未定 ジャンル:RPG
開発元:ミストウォーカー / フィールプラス / マイクロソフト

「RPGやったことありません。ドラクエもFFも」(漫画家 井上雄彦氏)
「ゲームらしくない人間を描きたい」(漫画家 井上雄彦氏)
「自分自身の作品の,新しい可能性を見た」(作家 重松清氏)
「ジャズボーカルを入れたら? なんて話ながらやってます」(作曲家 植松伸夫氏)


 坂口氏のプロデュースするもう一つのタイトルが,本作「ロストオデッセイ」。キャラクターデザインは,漫画「スラムダンク」や「バガボンド」で有名過ぎるほどに有名な井上雄彦氏で,BGMはブルードラゴンと同様に植松氏が担当している。

 ロストオデッセイは,"千年を生きる死ねない男"カイム・アラゴナーの物語。
 シナリオは,2001年に「ビタミンF」で直木賞を受賞した,作家の重松清氏が担当しており,千年にわたって人の死や欲望を見て涙の枯れ果てた主人公カイムを描く。魔導産業革命により魔法を得た人間が,その強い力を手に入れんと争いを繰り返すという世界観で,デザインは西洋寄りといったところか。

 発表時には,坂口氏,植松氏,井上氏,重松氏の全員が登壇して,それぞれに思いを語ってくれた。筆者も舞台を眺めていたわけだが,これだけ業界の異なる大物が一つの作品のために集結する場面は滅多に見られない。「スゴイ人が並んでるなオイ」という心境で,あらためて,ゲームにどれだけクリエイティブな要素が求められているかを痛感した次第だ。

 ……というわけで,4Gamerでは日頃扱わないコンシューマハードについてレポートしてみた。
 ここ数年E3などの海外のゲームショウではXboxの台頭が凄まじく,コントローラパッドというプレイアビリティの高さからか,PCゲームを展示するときにもXbox版が使われていることがよくある。海外ではXboxの成功でPCゲームとコンシューマゲームがある程度分け隔てなく扱われているが,日本ではまだまだ"別モノ"という意識が強い。
 とはいえ,このXbox 360が日本で成功すれば,国内でもコンシューマとPC共通のデベロッパや,移植版,同時開発版というコンシューマタイトルと複雑に絡み合ったゲームが急増すると考えられる。
 4Gamer.netはPCゲーム専門のサイトだが,今後はXboxをはじめとするコンシューマ機の重要なトピックは,随時お伝えしていく予定だ。(Gueed / Photo by kiki)

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【上段】ブルードラゴン【下段】ロストオデッセイ

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