ATI,HyperMemory解説などテクノロジーズセミナーを開催
Product MarketingDesktop Discrete Graphics Marketing Manager Vijay Sharma氏
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ATIテクノロジーズ(以下,ATI)は,本日(2005年3月23日)カナダ大使館でテクノロジーズセミナーを開催した。これはライバルのNVIDIAが何度かやっているようなプレス向けの技術説明会で,今回は扱っている題材もだいたい同じ。過去のニュースと併せて読んでもらえば,より興味深いかもしれない(「こちら」と「こちら」)。要するに,NVIDIAだけがいろいろやっているわけではないぞ,ということだ。 今日の主なテーマは二つ。PCI Express経由でシステムメモリをビデオ用に使用するHyperMemory技術とビデオ再生についてだ。
■HyperMemoryとTurboCache
まず,Vijay Sharma氏がHyperMemoryについての技術解説を行った。 HyperMemoryは昨年の9月頃にATIから発表されていた技術で,ざっと見て感じた方も多いだろうが,NVIDIAのTurboCacheとほぼ同じものだ。基本構想の発表自体はATIが先行したものの,製品化などでは完全に遅れを取り,このたびようやくRADEON X300SEなどのHyperMemory技術搭載製品が出てこようとしているところだ。 では,TurboCacheとの違いは? というと,一言でいえば「安くて速い」に尽きる。ビデオメモリ側からシステムメモリにアクセスするため,NVIDIAではGeForce 6200のマイナーチェンジでGeForce 6200TCを作って対応したが,ATIでは既存のX300チップそのままで対応している。PCI Expressはもともと双方向での読み書きが並行して可能な仕様なのだが,おそらく,GeForce 6200ではメモリコントローラが簡略化されており修正を必要としたのだろうと思われる。 「安い」という理由は単純にチップ単価が低いというところに行き着くのだが,「速い」というのも同様に単純だ。TurboCacheでは,メモリアクセスが32ビットバスで行われるのに対し,HyperMemoryでは64ビットでアクセスされるからだ。加えてピクセルパイプラインも多い。メモリ帯域の差はかなり大きいようで,TurboCacheのローカルメモリが画面表示だけで手一杯気味なのに対し,かなり余裕を持った処理が行えるようだ。ベンチマーク結果では,NVIDIA優位で有名な「DOOM3」まで持ち出してくるほどの自信の持ちようである(実は,ほんの少しだけ負けているのだが,素晴らしい健闘ぶりだ)。 ローエンドビデオカードだと,ゲーマーにはあまり関心がないところかもしれないが,NVIDIAの展開と比較すれば,これがノートPCにも応用される可能性は高いといえるだろう。仮にモバイル用3Dチップになれば非常に魅力的なものとなりそうだ。
■ATIのビデオ再生機能への取り組み
続いて,Alexis Mather氏によるATIのビデオ再生機能への取り組みについてが語られた。これもNVIDIAのPureVideoと対比すると分かりやすいだろう。というか,解説自体が要所要所でPureVideoとの対比で行われた。 念のため,おおまかに現状を確認しておくと,従来,ビデオ分野ではATIに一日の長があり,PureVideoでようやくNVIDIAも同じ土俵に上りかけているところだ。技術的な蓄積は歴然としており,全体に余裕の感じられるプレゼンテーションとなった。
デモンストレーション用に独自のデコーダであるNVDVDをリリースしているNVIDIAに対し,市販のデコーダを標準とするATI。NVDVDのデインタレース(インタレース解除)技術やPureVideoの画像処理は,それなりに最先端を行くものではあるものの,デモ映像に最適化されているため,通常のコンテンツでは破綻が目立つなどの指摘があった。
左:どうもIフレーム以外で画面が大きく変わるとデインタレースに失敗するぽい? (MPEG1:21.3MB)
右:ブロッキングノイズが除去されてない(下)(MPEG1:15.2MB)
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パフォーマンスに関する指摘もいくつかあった。GeForce6のビデオユニットが3Dシェーダと強く関連していることを示すデモも行われていた。3Dアプリとビデオ再生の同時処理という,通常ではあまり考えられないデモではあるが,ATIのビデオ処理は3Dパイプラインとは独立で行われることがはっきりと示されていた。
通常のビデオ機器などでもそうだが,恣意的な絵作りはときとして破綻しやすい。テレビ基準でエンコードされたデジタルコンテンツを忠実に再現してPC上で表示すると,必ずしも映像制作者の意図どおりの絵にはならない。というか,たいていかなり違う絵が出てくる。 液晶テレビで見たDVDプレイヤーの映像と,PCでDVDドライブから再生して液晶ディスプレイに映した映像では歴然とした差があるのは誰でもご存じだろう。見分けのつかない人はまずいない。いわゆる「テレビ」では,元気のいい発色のメリハリある画面が好まれるため,画像出力時にはそういう絵作りをすることが習慣となっている。DVD再生ソフトではなにも手を加えないのが普通だ。なにも手を加えない地味な画面を「マスモニ画質」と尊ぶ人もいるのも確かだが,普通の人は圧倒的にテレビ画質を好むものだ。そのような画質を目指して,より多く手を加え,より多く破綻しているのが現状のPureVideoの状況だといえるだろう。まだまだアルゴリズムの詰め方や経験値が足りないようだ。 実はATIでは,テレビ向けコントローラなどのコンシューマ製品も作っており,最近では米Sonyに全面採用されるなどの実績を上げている。液晶テレビの画質そのものを出す製品を大量に出荷している部署もありつつ,別事業部のRadeonなどではデコーダは他社のものを使うことを前提としているという。 プレゼンテーションにあったデインタレーシングの画像例を見る限り,はっきりいってATIのコンシューマ製品の技術は,WinDVDやPowerDVDよりかなり上のように思われたので,将来的にそういった技術がデスクトップ製品にも反映されることはないのかと質問したところ,「私に決定権があればすぐにでも入れるのだが,現状では難しい。しかし将来的な製品ではどうなるか分からない」とのことだった。今回わざわざコンシューマ製品の技術解説まで行われたところから,次世代製品あたりに期待してみたいところではあるのだが? (aueki)
左がNVIDIAのフレーム落ちの様子。3Dパイプラインとビデオ処理が分離されてない?(MPEG1:18.2MB)
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