[GDC#08]チョイスアワードは「Half-Life 2」。「塊魂」も健闘
GDCを運営するCMP社のコンファレンス・ディレクターを務めるジャミル・モレディナ(Jamil Moledina/写真左)氏と,IGDA代表ジェイソン・デラ・ロカ(Jason Della Rocca)氏の言葉で,チョイスアワードが開幕する
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現地時間の9日夜,GDCの会場であるモスコーニ・センターの西館にあるグランド・ボールルームにて,今年で5回目となるゲームデベロッパーズ・チョイスアワード授賞式が開催された。チョイスアワードは,IGDA(International Game Developers Association)の役員達による投票で毎年選出されている賞であり,市場での成功/不成功に関らず,"ゲーム開発者から見て素晴らしい"作品やその開発者,功労者が選ばれる。賞の結果は以下のとおりだ。
■イノベーション賞 「I Love Bee」 (4onty2wo Entertainment社 Elan Lee氏) 「ドンキーコンガ」(ナムコ 五十嵐博氏,小野田裕之氏) 「塊魂」(ナムコ 高橋慶太氏)
■新人賞 CryTek社(「FarCry」のAvni Yeril氏,Cevat Yeril氏,Faruk Yeril氏) ・次点 inXile Entertainment社,Obsidian Entertainment社,The Behemoth社
■脚本賞 「Half-Life 2」(Valve Software社 Mark Laidraw氏) ・次点 「Grand Theft Auto:San Andreas」「Leisure Suit Larry:Magna Cum Laude」「ペーパーマリオ」「Star Wars Knights of the Old Republic II:The Sith Lords」
■ゲームデザイン賞 「塊魂」(ナムコ 高橋慶太氏) ・次点 「Grand Theft Auto:San Andreas」,「Half-Life 2」,「ピクミン 2」,「World of Warcraft」
■オーディオ賞 「Halo 2」 (Bungie Software社 Paul Johnson氏,Marty O’Donell氏,Jay Weinland氏) ・次点 「Call of Duty:Finest Hour」「DOOM 3」「Grand Theft Auto:San Andreas」「塊魂」
■マーベリック賞 Matt Adams氏,Ju Row Farr氏,Nick Tandavanitj氏
■キャラクターデザイン賞 「Half-Life 2」(Valve Software社 Bill Fletcher氏,Bill Van Buren氏,Ted Backmann氏,Dhabih Eng氏) ・次点 「塊魂」「Prince of Persia:Warrior Within」「怪盗スライ・クーパー2」「World of Warcraft」
■ファーストペンギン賞 Richard Bartle氏
■テクノロジ賞 「Half-Life 2」(Valve Software社 Brian Jacobson氏,Yahn Bernier氏) ・次点 「Burnout 3:Takedown」「DOOM 3」「Eye Toy:AntiGrav」「FarCry」
■ビジュアルアーツ賞 「World of Warcraft」(Blizzard Entertainment社 Justin Thavirat氏,Sam Didier氏,William Petra氏) ・次点 「DOOM 3」「Half-Life 2」「ペーパーマリオ」「Prince of Persia:Warrior Within」
■コミュニティ貢献賞 Sheri Graner Ray氏
■ライフタイム・アチーブメント賞 Eugene Jarvis氏
■ベストゲーム大賞 「Half-Life 2」(Valve Software社 Ken Birdwell氏,Gabe Newell氏,Jay Stelly氏) ・次点 「Burnout 3:Takedown」「Grand Theft Auto:San Andreas」「塊魂」「World of WarCraft」
ゲーム大賞を受賞したValve Software社のゲイブ・ニューウェル氏(左)と,次の世代を担うデザイナー・ケン・バードウェル氏(右)
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結果を見ると,4部門を獲得した「Half-Life 2」の圧勝だ。2005年はコンシューマゲームタイトルのノミネートが意外に少なく,それだけPCゲームに大作が多かったといえるが,その中でもHalf-Life 2の出来の良さは群を抜いていたと判断されたようだ。 思えば第1回チョイスアワードでも「Half-Life」が大賞をはじめ総ナメの状態だったため,壇上に登ったゲイブ・ニューウェル(Gabe Newell)氏も,「連続して賞をもらったから,次はすごいプレッシャーになるね。でももし失敗したら,次のプロジェクトを担当することになっているケンのせいだよ」と,噂されている「Half-Life 3」のゲームデザインが,若手のケン・バードウェル(Ken Birdwell)氏の手に委ねられることを示唆していた。
「塊魂」でゲームデザイン賞を受賞したナムコの高橋慶太氏
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ナムコの「塊魂」(米国では「Katamari Damacy」)は,5部門のノミネートのうちイノベーション賞とゲームデザイン賞の二つだけに留まったが,会場内の歓声が最も多かったことからも,米国の開発者達の評価が非常に高かったのが分かる。当日に到着したばかりの高橋慶太氏は,イノベーション賞のときに「時差ボケで眠たいです。でもありがとう」とコメント。さらにゲームデザイン賞の受賞では「だいぶ頭が回転してきました。ありがとう」と短いながらもユニークな話しぶりで会場を沸かせていた。
ゲーム産業のアウトローに贈られる「マーベリック賞」を受賞したのは,イギリスのメディアアーティスト3人組。劇場の観衆たちが携帯電話を持ち,街でリアルタイムに行動する役者とチャットで意思疎通しながらストーリーを進めていくという,「Uncle Roy All Around You!」などのパフォーマンスが,ゲーム的ながらも既存の枠組を越えた活動として認められたようだ。 「コミュニティ貢献賞」は,IGDAで13年前から「ゲームと女性」という問題に関ってきたシェリー・グラナー・レイ(Sheri Graner Ray)氏が受賞している。最近ではSony Online Entertainment社で「Star Wars Galaxies」のキャラクターデザインなども手がけている氏だが,「Gender Inclusive Game Design Expanding the Market」(女性も考慮したゲームデザインは市場を拡大させつつある)と題した論文を上梓するなど,現在も精力的に活動しているのが評価された。
業界の先駆けとなった人物に贈られる「ファーストペンギン賞」は,「MUD-1」という,MMORPGの基礎となるソフトを1978年に開発したリチャード・バートル(Richard Bartle)エセックス大学教授に贈られた。MUDは「マルチ・ユーザー・ダンジョン」の略称であり,このシステムから構築された理論は,現在のMMORPGの核心部分としてそのまま利用されているという。ファーストペンギンとは,「サメに狙われやすいにも関わらず,寒水に一番最初に飛び込むパイオニア」という意味だが,バートル氏は「私は必要に応じて飛び込んだというより,誰もいない場所で飛び込んでみただけの無鉄砲者」と会場を笑わせながらも,開発から27年を経てようやく評価されたことに感謝しているようだった。
また,「ライフタイムアチーブメント賞」に選ばれたのは,ユージーン・ジャーヴィス(Eugene Jarvis)氏である。彼は,6万台のアーケード機,700万本のAtari 2600ソフトという記録的なヒットを飛ばした「ディフェンダー」(1980年)を皮切りに,「Robotron 2084」(1982年)や「Smash TV」(1991年),「Crusin’USA」(1994年)などのデザイナーとして知られている。 彼の作品には,とにかく倒すべき敵がワラワラと登場するようなアクションゲームが多く,とくにRobotronは今でも多くの開発者のトラウマとなっているらしい。まるで「DOOM」のご先祖様のようなソフトだが,ジャーヴィス氏自身はRaw Thrills社を起業して現在でも第一線で活躍しており,緊張の面持ちながらもにこやかで優しそうな風貌が印象的だった。(奥谷海人)
写真左:「FarCry」を制作したイェリル3兄弟は「最後まで信じてくれたUbisoftにありがとう」と述べた
写真右:脚本賞の受賞コメントとして,ライターらしく几帳面に書かれたメモを読み上げるValve Software社のマーク・レイドロー(Marc Raidlaw)氏
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写真上段左:Bungie Software社のポール・ジョンソン氏(左)とマーティ・オドネル氏(右)はオーディオ賞に選ばれた
写真上段中:ファーストペンギン賞のモデレート(審査員)を務める七音社の松浦雅也氏と,SOE社のラフ・コスター氏
写真上段右:バーチャルワールドの第一人者でもあるリチャード・バートル博士は,イギリス人らしいウィットで会場を沸かせていた
写真下段左:テクノロジ賞の受賞で,「一人だけ壇上に上がるのは開発部の仲間に申し訳ない」と謙遜する,Valve Software社のブライアン・ジャコブソン氏
写真下段中:Blizzard社の若きアーティスト,ジャスティン・サビラット氏は,評価の高かった「World of WarCraft」の開発メンバーだ
写真下段右:ゲーム業界の草創期を知り尽くした元Atari社のユージーン・ジャーヴィス氏は,現代にも通じるアクション要素満載なシューティングゲームを得意としていた
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