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[GDC#05]日本のシリアスゲーム,DirectXなど2日目の見どころ
2005/03/09 23:53
■「信長の野望 Online」も「蚊2」もシリアスゲーム?
藤本氏(壇上)らが日本のシリアスゲームを説明する間も,真剣にメモを取る欧米の業界関係者達
 さて,[GDC#04]で触れた"Quality of Life"のほかにも,2日目の会場ではさまざまなチュートリアルが行われていたので,報告していこう。

 前日に引き続いて行われた「Serious Game」サミットでは,本日は藤本徹氏(Toru Fujimoto/ペンシルベニア大学),新清士氏(Kiyoshi Shin/IDGAジャパン コーディネーター),そして馬場章氏(Akira Baba/東京大学)らによって,日本のシリアスゲームの現状が語られた。
 まず藤本氏が,シリアスゲームとしての機能が認められる日本国内の各種エンターテイメントソフトの事例を説明,ナムコが「太鼓の達人」を使って高齢者を対象に行っている"リハビリテーション"活動などを紹介した。
 続いて登壇した新氏は,GDCで2002年から2003年にかけて行われていたAcademicサミットをIGDAジャパンが踏襲して,東京大学などとコラボレーションしている事例を挙げ,CEDECでもシリアスゲームを取り上げるセミナーを計画していると,日本側の取り組みを解説した。また,裏付けのない"ゲーム脳"論がメディアで過大に扱われていることを実例に,ゲームに対して批判的な日本の言論状況を紹介したのは興味深い。"ゲーム脳"という言葉を知っている業界関係者は米国では皆無らしく,日本のゲームカルチャーにも後退的な動きがあることを知った参加者は驚いているようだった。
 さらに馬場氏は,東京大学のゲーム研究プロジェクトのあらましを説明し,「ゲームと人間」「ゲームと社会」「ゲームと技術」などゲームの多目的利用を研究していることを,ムービーを交えて披露した。

 日本の関係者の間では,シリアスゲームがより広義に捉えられているようで,馬場氏もコーエーと共同して,「信長の野望 Online」を利用した中等教育へのシリアスゲームの浸透を企画していると語っていた。確かにゲームは面白くなければゲームではないわけで,その点では藤本氏が「電車でGO!」や「蚊2」「ネオアトラス」などを日本産のシリアスゲームの例として紹介していたのと符合している。日本では,本格的なシリアスゲームとなり得るアイデアを持つ普通のソフトも,決して少なくはないということだろう。

 シリアスゲームに関するレクチャーはほかにも覗いてみたが,アメリカのコーストガード(沿岸警備隊)の訓練のために「Battlefield 1942」のゲームエンジンをモディファイして制作された「Shield of Freedom」というソフトやら,ミサイルの制御装置としてインタフェースを開発した結果,「今の兵士の世代なら誰でも使いこなせるプレイステーション 2のゲームパッドの形状に行きついた」という話やら,なんだかミリタリー関係の話題も多かった。シリアスゲームのサミットは,もはやゲームが既存のゲームの範疇を飛び越えて,我々の現実生活と関っていることを,痛切に教えてくれるレクチャーだった。

■Windowsと一体化して,今後WGFと呼ばれるDirectX
プロジェクタはほとんどDVDムービーの再生に利用していたため,手書きでレクチャーを進めていくエヴァンス氏
 さて本日は,「Microsoft Game Developers Day」と称して,以前までの「DirectX Day」のようなスポンサー型のレクチャーも行われていた。開発現場向けの実践的な講義内容が多く,ゲームコントローラ,フレームレートなどのムダ使いをチェックするPIX(Performance Investigator for DirectX),Visual Studio 2005などのアジェンダが続いていた。
 DirectXは,次世代WindowsのLonghorn(ロングホーン)が登場することによって,今後WGF(Windows Graphics Foundation)と改名され,OS本体とのさらなる連携が計られることになる。ビデオチップの演算速度の向上は凄まじいものの,現状では接続帯域幅の制約がボトルネックとなっているのは,今後改善されるべき問題の一つ。もはや,我々一般のゲーマーが興味を持つところではなくなってきているようにも思えるが,DirectXが"縁の下の力持ち"としてPCゲームを支え続けるのは間違いないだろう。

 もう一つ,少しだけ顔を出した講義「Composition & Sequential Storytelling」(構図と連続的なストーリテリング)も面白かった。これは,北京にデジタルアニメーションスタジオを開設したアメリカ人,ジャスティン・エヴァンス(Justin Evans)氏による視覚技術系のレクチャーで,カメラの構図やカメラ位置をハリウッド映画から学ぶことで,より合理的なストーリーテリングの手法を学ぼうという主旨になっていた。コンピュータグラフィックスのアーティストやゲームデザイナーは,映画が培ってきた映像言語を十分に理解していない場合も多く,ゲームにCGムービーを活用しようという開発者には実践的な講義だったようだ。(奥谷海人)

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http://www.4gamer.net/news/history/2005.03/20050309235337detail.html