[韓国ゲーム事情 特別編]韓国の”Cy”熱風は,オンラインゲームコミュニティのトレンドを変える!
2004/10/05 23:22
Text by Kim Dong Wook特派員

 インターネットがもはや生活の一部となった韓国では,最近は"アバター"に続いて,"Mini Hompy"という新しいインターネットコミュニティが急激に人気を集めている。先日So-netでのサービスが決定した「ソンピィ」も,このMini Hompyの流れを汲むものだ。
 韓国国民の4人に一人が楽しんでいる超大型Mini Hompy,「Cy」(サイ)の人気は,オンラインゲームにも影響を与えている。あるオンラインゲーム開発者は,オンラインゲームとMini Hompyの結合は,プレイヤーのゲーム離れを防止し,継続的にゲームをプレイさせるための最高の要素とまで表現している。
 ここでは,このオンラインゲームコミュニティの形態を一変させるほどのインパクトを持つ,韓国の新しいコミュニティトレンド「Cyworld」を中心に,Mini Hompyについてレポートしよう。



■1000万人が毎日楽しむ超大型コミュニティ
Cyworld
 最近加入者が1000万人を突破したCyworldは,同名の会社Cyworld社が2001年9月にオープンしたコミュニティサイト。このCyworld社は,2003年8月に韓国の大手財閥SKグループのSK COMMUNICATION社に合併されており,今では同社内のCYWORLD事業部となっている。サイトのほうはこの合併を機にサーバーを増やしてサービスメニューを多様化して,その後急速に会員数を増やしている。
 あるインターネット調査会社によると,韓国の20代前半(正確には19〜24歳)のインターネット利用者の約9割が定期的にCyworldに接続するほど若者達の間で爆発的な人気を集めていて,さらに10代前半から上は40代まで,その層は急速に広がりつつある。
 Cyworldを利用する全会員の約8割は10代と20代で,いわば感受性の豊かな世代。個性を重要視する世代だから,多様なデジタルアイテムが用意されたCyworldが注目されたのは,ある意味当然だったといえるだろう。スキンデザインを自由に変更できるとか,マウスを使って絵を描けるといったユーザー中心のインタフェース設計も,若い世代の好みに合っている。

 "Minimi"というアバターや,"Dotori"(韓国語で"どんぐり"の意)と呼ばれるCyworld内でのサイバーマネーは,新鮮な楽しさを与える要素の一つだ。韓国の若者達は,誕生日の贈り物をDotoriで交換することを最も好むほどである。
 Cyworldの会員達は,現金またはクレジットカードでDotoriを購入して,そのDotoriを使って自分のMini Hompyを飾るデジタルアイテムを購入する。Dotoriは1個約10円と,この金額だけを見たら非常に安く感じるかもしれないが,実際にHompyのスキンなどを一つ購入しようと思ったら,10〜20個のDotoriが必要となる。そのためユーザーもあまり意識しないまま,意外と多くのお金を使っているようだ。SK COMMUNICATION社はDotoriの販売で,1日約1500万円1か月では約4億5000万円もの売り上げを手にしている

■中毒者やストーカーが出るなどの弊害も

 Cyworldは,作成や更新に手間のかかる一般的な個人サイト(ホームページ)とは違い,自分の写真などを簡単に飾ることででき,また連絡先が分からなくなった昔の友人を捜したり,親しい友人達と気軽に交流したりできる機能などで人気となった。その人気を後押ししたのが,カメラ付き携帯電話と,デジタルカメラの流行だ。いつでもどこでも写真を撮って,それを人に見せるのを楽しむという韓国人の好みにも,ピッタリとあったわけだ。

 こうして韓国人にとって日常の一部となったCyworldは,新たな文化さえ作り始めている。初めて会った人同士がメールアドレスならぬMini Hompyの交換を行うのが普通になったし,Cyzil(Cyworldに写真や文章を載せる行為)やCyholic(Cyworld中毒者)といった新語も生み出された。一部の会社では,業務の妨げになるとして,オフィスからCyworldに接続できないようにしているほどだ。
 またCyworldは,多くの企業によって,マーケティング手段としても活用されている。自社商品のイベントMini Hompyをオープンして,そこでDotoriを配布したりしているのだ。
 さらには有名芸能人,政治家達もその多くがCyworldを利用しているという。しかし人捜し機能を利用して,有名人のMini Hompyを監視/ストーキングする犯罪行為も多くなっているという。

■オンラインゲームとの結合も流行
「君主」のMini Hompy
 韓国のMini Hompyの熱風は今,オンラインゲームとの結合を通じて,極め付きのシナジー効果を生み出す兆しを見せている。
 ポータルサイトを運営するIntizen社が開発したMMORPG「君主」のMini Hompyは,Cyworldとかなり似ているが,ゲーム中のキャラクターとMini Hompyのアバターが完全に連動しているというのが面白い。君主を楽しむすべてのプレイヤーが自分のMini Hompyを持つことになるので,ほかのプレイヤーの個性/人間性といったものが分かりやすく,コミュニティの自由度が非常に高くなったといえる。
 なお,もちろん日記や写真アルバム,ReplyシステムといったMini Hompyの基本機能は押さえていて,さらに音楽ファイルや動画ファイルも掲載可能となっている。

 日本でもジークレストからサービスされる予定のMMORPG「Trickster」(トリックスター)には,Mini Hompyと似た"My Camp"システムが搭載されている。これはプレイヤーだけの空間としてゲーム内のどこにでもオープンでき,移動するときにはクローズすることになる。
 Tricksterを開発したNtreev Soft社の関係者は,「今後このMy Campシステムに既存のMini Hompyのような掲示板や写真アルバム機能を搭載し,さらにはチャット機能やギルドメンバー同士のMy Campを連結する機能など,独自の機能もたくさん入れていく予定」と語っている。
 なおMy Campの基本セットはゲーム内通貨で購入できるが,Camp内の飾り用アイテムは現金で購入する仕組みとなっている。

 NEXON社のMMORPG「Elancia」(エランシア)には,Mini Hompyタイプの"個人部屋"が存在する。この個人部屋は,やはりプレイヤーだけの空間として機能し,タンスやベッドなどのさまざまな家具やアイテムを利用して,本当の部屋のように飾ることができる。またほかのプレイヤーのキャラクターを部屋に招く,招待機能も用意されている。
 あるプレイヤーは,「この個人部屋は,訪問者の数と,訪問者が部屋に泊まった時間,そして利用者の名声によってレベルが上がるのが面白い」と話している。

左は「君主」のMini Hompy,右はTricksterのMy Camp


ddangkong
 一方ゲームポータルサイトにも,続々とMini Hompyが登場している。
 SK COMMUNICATION社が運営する新しいゲームポータルサイト「ddangkong」は,CyworldのDotoriアイテムを利用した連携マーケティングで,人気急上昇中だ。また韓国で五指に入るゲームポータルである「mGame」も,同社がサービスするすべてのゲームにMini Hompy機能を搭載して,プレイヤー間のコミュニティをより強化しているし,オンラインゲームの絵柄のMini Hompy用スキンを利用したマーケティングも,良い結果を出している。
 そのほか新生ゲームポータルの「Wagame」も,"wahome"というMini Hompyを前面に押し出しているし,現在韓国で開発中の多くのオンラインゲームでも,Mini Hompyを基本機能として搭載することが知られている。

上段はどちらもmGameのMini Hompy。下段左はwahome,下段右はSpecial Force


■Mini Hompyとオンラインゲームの連動が新しいトレンドに!

 新しいコミュニティのトレンドであるMini Hompyは,ゲームポータルサイトのコミュニティを結集したもの,あるいは飾り用アイテムを販売するためのものといった段階で,まだ明確なビジネスモデルを確立していない。しかしオンラインゲームと連動することによって,大きなシナジー効果を生み出すことができるだろうと業界専門家たちは予測している。
 オンラインゲームをプレイしている間は「ウルティマ オンライン」の"家"のようなHouse機能を利用して,ログアウト後には,自分だけの個人ページ機能でゲームをプレイしている(つまりログイン状態の)友人と相互コミュニケーションが可能……といった具合に,十分に利用価値があるというのだ。
 近い将来,Mini Hompyとオンラインゲームが完全に連動しながらも,それぞれが単独でも十分楽しさを感じられる形態が生み出されることは間違いないだろう。





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http://www.4gamer.net/news/history/2004.10/20041005232228detail.html