[GC#05]UBI,「Splinter Cell:Chaos Theory」デモを一般公開
2004/08/24 22:19
 「Tom Clancy's Splinter Cell」は,ステルスを駆使して敵地の奥深くへと侵入していくスパイ系のアクションゲームとして,欧米で非常に高い人気を誇っている。Xboxではなくてはならないタイトルとして確固たる地位を築いており,UBI Software社にとっても願ってもないブランドに成長した。
 その第3作にあたる「Tom Clancy's Splinte Cell:Chaos Theory」のデモンストレーションが,ヨーロッパでは初めて公開された。これは,そもそもXbox用ソフトとしてE3で発表されたものと同じだが,一般のファンが見るのは初めてのこと。前作「Splinter Cell:Pandora Tomorrow」もPCに移植されたので,大きな期待をもって紹介したい。

 Chaos Theoryは,前作のインドネシアから舞台を移し,なんと日本のヤクザとの戦いもあるなど,世界を股にかけた金融事件がテーマとなりそうだ。その詳細は不明だが,今回公開されたのは「合気道マップ」と呼ばれるもので,和風の内装や日本庭園を用意した,「キル・ビル」や「ライジング・サン」を連想させる,狙ったような勘違い系の世界が広がる。



 まず主人公サム・フィッシャーは,外回廊の天井部分に取り付けられているパイプにつかまって,「Pandora Tomorrow」の電線で行ったようにスルスルと目的地まで伝っていく。やがてガードの真上までやって来たのを見定めて上半身を下ろし,敵を持ち上げて首をひねり,殺してしまう。そのまま熱探知ゴーグルを操りながら次の部屋に入ると,サムは慣れた要領で金色の阿弥陀座像の前にあるロウソクの火を吹き消す。すると,隣り部屋のガードが不信に思って,明かりを灯そうと部屋に入ってくる。これを背後から羽交い締めにして首を折り,さらに奥へと進んでいくのだった。

 興味深いのは,前作でも効果的に使われていた水面の反射が,本作ではさらにパワーアップして各所で強調されていることだ。雨が降ると石畳はテカテカとなるし,ヒノキ風呂に注ぐ湯が水面を揺らす様子,大理石に移り込む人影など,目一杯利用されている。
 さらに面白いのが,NVIDIA社の技術デモとして1年ほど前に話題になったProjection Mapping効果を使い,障子に映る人影が実際よりも大きく歪んで見えるようなスクリプトシーンが用意されていることだ。日本刀で切られるような影が投影されたあと,サムは障子を破って突入し,人を殺したばかりの敵の首を素早く捻じ曲げた。不思議なのは,サムはほかの場面では丁寧に障子を開けていたこと。障子でも破れる場所とそうでない場所があるということだろうか。
 スクリプトに関しては,Chaos Theoryではとくに敵の行動パターンを増やすことで,キャラクターを生き生きとさせることに使っているようだ。さらに次のエリアに進んでいくと,サムは隙間の開いた階段に身を屈め,3人の男が話し合っている部屋へと侵入することになる。一人は階段に近く,足しか見えないが,プレイヤーが近くまで来たときに突如小銭をポケットから落として拾い始めるのだ。プレイヤーをヒヤッとさせる小憎い演出だが,さらに別の男が株の暴落で金融バランスが大きく狂ったというような時事ネタを話し始めるあたりは,映画的な構成テクニックさえ感じさせる。
 このあと,室内庭園のスプリンクラーを作動させて敵をおびき寄せて始末し,さらに進んでテレビを見ているガードマンのいる部屋にやってくる。ここでサムが銃を使ってテレビを受信不可能にすると,この男が緊急処置としてテレビの横を叩き始める。どうやってコントロールしたのかは不明だが,今度は首を捻じ曲げるのではなく,そっと敵に声をかけて自分に気づかせ,そのまま相手の体をくねらせて首をナイフで掻き切るという手段を採っていた。
 そのまま先に進んでいくと,このミッションの最終目的地と思われる庭に到達し,ここで二人のガードマンを相手に銃で直接戦い始める。ここではヘリコプターが今にも飛び立とうとしているが,ガードマンはプレイヤーを通さまいと銃を乱射してくる。車のドアを開けて盾として使うなど,思考ルーチンも洗練されているのが分かる。



 PC版に関しては何も情報を出してもらえなかったが,Chaos TheoryはXboxのオンラインモードにも対応していて,協力プレイが楽しめるということだ。ただし対戦はできず,シングルプレイヤーモードのミッションを,二人の協力によって進めていくことが可能になる。
 どのような形で難易度を変化させるかのは公言されなかったものの,一人がもう一人のプレイヤーキャラクターを高所に放り投げるとか,ワイヤー探知機が仕掛けられていると思われる床に下りるのを嫌って,もう一人に足首を持ってもらって宙吊りになった状態でコンピュータにハッキングするなど,込み入った連携を楽しめるようになるようだ。

 Splinter Cell:Chaos Theoryは,UBI Software社のカナダ・モントリオール支部で制作されており,2004年11月に発売を予定している。プレイ感や雰囲気はそのままに,細かい部分での改良が見られ,とくにオンラインモードはステルス系アクションゲームにはなかった独特の仕様となっている。Splinter Cellの人気は今後も続きそうだ。(奥谷海人)

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