ガマニアがSOEとの戦略的提携を発表。「EQ east」の開発など,アジア市場を睨んだプロジェクトを始動
2004/07/24 11:06
 2004年7月23日,ガマニアデジタルエンターテインメントは,Sony Online Entertainment(以下,SOE)とアジア市場向けの展開についての戦略的提携を行う旨を発表した。ガマニアとSOEは今回の提携に基づいて,
・合弁会社の設立
・アジア太平洋地域における作品運営の全面提携
・技術提携
・中国市場への投資戦略

という,四つのプロジェクトを進めていく予定だという。

 元々ガマニアは,台湾,香港地域における「エバークエスト」(原題:EverQuest)の運営を行っているほか,日本においても,同作のサービスがSo-netからガマニアに移管されることが発表されたばかり。つまり,ガマニアとSOEの間には既にパートナーシップがあったわけだが,今回の提携は,そこから先にさらに一歩踏み込んだ形となる。
 SOEといえば,ご存じあの「EverQuestII」「Star Wars Galaxies」を擁する北米最大級のオンラインゲームパブリッシャ。同社は,アジアで最大規模を誇るオンラインゲームパブリッシャであるガマニアと提携することで,アジア地区におけるガマニア運営/営業力や,同社の課金決済プラットフォームを利用することが可能になり,アジア市場進出の足がかりを確保することになる。一方でガマニアも,SOEの持つコンテンツの獲得と技術提携という,二つの大きなメリットを得ることになるわけだ。
 また,クレジットカードかゲームタイムくらいしか課金方法のない北米市場にとって,日本を含めたアジア圏への進出は,課金決済が大いなる問題。SOEにとって,クレジットカード,携帯,ISP課金,WebMoney,コンビニなど多機能な入り口を誇るGASH課金決済プラットフォームを手に入れられることは,またとない絶好のチャンスとなる。

 ガマニアは,まず提携の第一歩として,SOEが開発中の人気MMORPGの続編「EverQuest2」(以下,EQ2)のアジア向けローカライズを担当し,日本を除くアジア各地域への配信を行うという。配信する地域は,お膝元である台湾を始め,さらに香港,中国,タイ,フィリピン,シンガポール,マレーシアなど,主要なアジア地域のほぼ全てをカバーする体制である。ガマニアのCEO劉柏園氏は「この提携が成立することによって,より多くの優れたオンラインゲームをアジア太平洋地域のユーザーに提供できる」とコメントしており,アジアのオンラインゲーム市場のリーダーとしての地位を目指す構えだ。両社は合弁会社「SOE Asia Licensing Inc.」を台湾に設立すると発表しており,提携事業の中核を同社が行う予定。アジア市場向けの新タイトルなどもこの会社を通じ,共同で開発していく方針だという。



日本ではスクウェア・エニックスが運営することになった「EverQuestII」。E3以降遅れている話しか聞かなかったが,ここへきて急激にスパート。我々が思っている以上に早いタイミングで,姿を現すことになるかもしれない



 そんなSOE Asia Licensing Inc.だが,その事業内容の中でもとくに気になるのが,EQ2をアジア向けにアレンジして作り直すという,「EQ east」およびその拡張パックの開発を掲げているところだろう。EQ eastとは正式なタイトル名ではなく,あくまでもコードネームだとのことだが,なんでもEQ eastには,"最新のアジア風設定"をコンセプトにアジアユーザー向けの要素を注入するというから,非常に興味がそそられる話である。違和感のない文章や音声といった徹底したローカライズ作業は当然のこと,キャラクターモデルの変更や,アジアユーザーに合わせたバックエンドの管理システム(RMT周りなども含まれるのだろうか)など,かなりの大がかりな変更が施されることになるようだ。
 EQ2は,日本ではスクウェア・エニックスによって運営されることが既に発表されているが,このEQ eastと北米版の仕様(日本はこちらに準拠か?)と差異がいかほどのものか,そしてEQ eastのリリースがいつになるのかなど,今後のさらなる追加情報が気になるところである。またもちろん,EQ eastの拡張パックについても発表では触れられている。アジア圏専属のEQ2拡張パックが登場することになる。

 加えて見逃せない点がもう一つ。事業提携の内容の中に「SOEのゲームエンジン,開発キット,および開発力は,すべて戦略提携の関係でガマニアに移転します」という一文がある点だ。"技術提携"ではなくて"移転"だというところがミソ。これは,共同で開発するという「新タイトル」に対して,SOEの技術……つまりはEQ2のゲームエンジンなどが使われることを意味する。EQ2のゲームエンジンを使った武侠モノのMMORPGなどが作られるのかもしれない。どんな作品が作られるのか,こちらの動向もかなり気になるところ。
 "開発技術の移転"は即時行われるように読み取れるので,次のガマニアの新作には,SOEのテクノロジーがふんだんに取り込まれていても,まったくおかしくない。むろんガマニアの新作の北米・ヨーロッパの運営優先権はSOEが保有することになるので,両者にとってまったくおいしい提携話となる。

 このリリース文書を読む限りは,今後SOEは北米市場ばかりでなく,アジア市場をも強く見据えたオンラインゲームの開発を行っていくように読み取れる。北米のMMORPG市場はすでにバブルが弾けて開発中止が相次いでいるのが,それに拍車をかけているのかもしれない。日本でEQ2を運営するスクウェア・エニックス,StarWars Galaxiesを日本で運営する会社(こちらもほぼ決定済み)との関係も,若干なりとも気になるところ。E3時のEQ2の発表を皮切りに,本格的にアジア圏への進出を図るSOEもさることながら,これからのガマニアの動向も,日本のMMORPGファンにとって目が離せないものになりそうだ。(Kazuhisa)



一部コアファンから,まだかまだかと思われていたStar Wars Galaxies。完全Skill制・3D・Star Warsと,売れそうな要素は抱えているだけに,展開が期待される一品だ。日本での運営会社もほぼ決定し,あとは,映画のファンが泣いて喜ぶ拡張パック「Jump to LightSpeed」を待つばかり



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