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コサックス −攻城の世紀− 完全日本語版
Text by 虎武須(Kobs)
25th Jun.2001
 「コサックス−攻城の世紀− 完全日本語版」(以下,コサックス)は,"サドンストライク"を開発したドイツのCDV Software EntertainmentのRTS第2弾となるタイトルだ。国内では,完全日本語版がズーから9月14日に発売される予定となっている。サドンストライクといえば,画面構成やゲームシステムから全体的に"ちまちま"としたイメージがあったが,このコサックスに関しては同じようなゲームシステムにも関わらず,そのような印象は受けない。むしろAge of Empiresシリーズ(以下,AoE)によく似た画面構成やインタフェースとなっているので,AoEプレイヤーなら違和感なくすんなりとコサックスのゲームシステムを理解できるのではないだろうか。時代背景は16〜18世紀のヨーロッパを舞台としており,この点でもちょっとAoEライクだ。
 ではコサックスは,よくあるAoEのクローンゲームなのだろうか? 資源を集めて内政を行い軍備を増強するシステムやその時代背景,そして操作性と画面構成。これらは確かにAoEと酷似している。しかし決定的に違う部分はスピーディーなゲーム展開だ。さらに最も特徴的な部分は,隊列編成の概念にあるといえるだろう。

スピーディなゲーム展開に付いていけるか

クリックすると拡大します  予め断っておくが,コサックスのゲームスピードに慣れてしまうと,これまでのRTS(リアルタイムストラテジー)が非常にかったるく感じることになる。  どの点が「スピーディ」なのかというと,まずユニット生産のスピード。自国ユニットは,かなりの速さで連続的に生産され,たとえば18世紀の槍兵などは,数珠繋ぎとなってつぎつぎと画面上に現れてくるのだ。雇用スピードの速い傭兵を雇うときなどは,さらに素早く部隊編成を行うこともできる。
 これは,ゲーム開始後の内政がままならないうちから50体や100体の騎兵軍団が出来上がってしまうことを意味している。要は,序盤から激しい戦闘を行いつつ内政にも気を配らなくてはならないのだ。
 またコサックスでは,ゲームをスムースに展開させるために,敵の内政や資源に関係する建物群をわざわざ壊さずとも簡単に略奪できるようになっている。もし建物を警護する防御用の兵を置く前に敵に攻め込まれたら,"あっという間"に自国の多くの建物が敵の所有物となってしまう。もちろん,兵力さえ整えればすぐに奪還することも可能だ。これら序盤の激しい攻防が,コサックスの魅力の一つといえるだろう

 とはいえ城壁や塔といった敵の侵入を防ぐ建造物のコストが非常に高く設定されているために,序盤から防御に徹するという戦術は不可能といってもいい。序盤から中盤において敵の侵入を防ぐにためには,とにかくそれに対抗しうるユニットを生産するしかないわけだ。これらのファクターによりゲームの展開が非常にスピーディで,場合によってはゲーム開始直後に決着がついてしまうこともあるだろう。はっきりいって,これはかなり忙しい。

陣形と隊列そして高度の概念を理解して戦術を組み立てろ

クリックすると拡大します  さてコサックスのウリのひとつとなる"陣形"と"隊列"の概念なのだが,ストラテジーには不可欠と思われるこれらの要素が今までのRTSになぜ実装されていなかったのか不思議なくらいだ。最前列に槍兵を,次に鉄砲隊,その後ろに騎兵,そして最後列に大砲を並べて……こういった組み立てを行うことにより,現実に則した戦いを味わうことができる。
 陣形の組み方は3種類用意され,その部隊の特性に合った陣形を組むことにより,さらなる効果を発揮することも可能だ。たとえば消耗品として扱われる槍兵(基本的なユニットの一つ)は箱形に配置しても意味はなく,最前列に並べて敵の攻撃に耐えさせるというのがセオリー。また陣形を組むには,指揮官だけでなく鼓兵が必要となるのがコサックスのユニークな点だ。
 また,3Dで表現された地形は戦略にさまざまな効果をもたらしている。たとえば高所から見下ろした場合の視界は広くなり,また砲撃などの射程も長くなる。高度をゲームに取り入れていることはそれほど珍しくないが,コサックスではその効果が顕著に現れているのだ。
 敵の本拠地に近いところで高地を占領すれば,戦いを有利に進めることができるし,渓谷で敵の部隊の通過を待ち伏せすることも有効な戦術だ。視界については,時代を進化させて最高状態となる18世紀に突入してから偵察気球を揚げてしまえば,マップ全体が見渡せるようになるので,それまでのアドバンテージでしかない。

戦場に入り乱れる8000ユニットを体験せよ!

クリックすると拡大します  最後にもう一つ。コサックスではなんと8000ユニットを同時に戦場に送り出せるわけだが,これほど多くのユニットが入り乱れて戦闘するにもかかわらず,ごくごく一般的なスペックのPCでも不思議なくらい動作が軽いのだ。処理落ちなどを微塵も感じさせずに,大量のユニットの乱戦を眺めるのは実に壮観で痛快だ。ただしユニットが多すぎるために管理が非常に困難となってしまっているのは残念な点の一つ。特に隊列の組めない騎兵や傭兵などのユニットは,移動させるだけでも非常に大変な作業となってしまう。せめてそういった種類のユニットだけでも,グループ化する方法を用意してほしかった。
 視覚効果は,最近のゲームらしく派手なエフェクトとなっている。弓兵の放つ矢の軌跡や延焼する建物,派手な爆発……。これ以上に派手なのが海戦だ。戦艦の砲弾は画面狭しと飛び交い,船は派手な爆発によって木っ端微塵になって水柱が立つ。
 また建築物も,選択した国々によって異なる美しいグラフィックスが用意されている。街並みを美しく構築していくという箱庭的な楽しさも併せ持っているといえるだろう。コサックスは,画面そのものの魅せ方にも非常にこだわっているのだ。

 本作は,これまでのRTSに見られるオーソドックスな世界観やシステムを採用しているために,目新しい要素は少ないと感じられがちだが,実は多くの特徴的なフィーチャーを実装している。特にゲームを異様なまでにスピーディに展開させている部分は,マルチプレイヤーゲーム(8人までに対応)をするときでも効果的に働く。あまりゲームシステムに変化が見られないRTSというジャンルにおいて,一つの頂点をプレイヤーに対して提示してきたのではないだろうか。
 オープニングのイントロムービーから始まって,インタフェースや視覚効果,サウンドに至るまで全体的な完成度は高く,この作品のみならず今後のCDV Software Entertainmentを期待させてくれる一品だ。RTSファンはこの作品を見逃してはならない。ぜひ勇壮な大軍同士の乱戦をプレイして,戦いのカタルシスを大いに味わっていただきたい。

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■発売元:ズー
■価格: 8800円(日本語版は9月14日発売予定)
■問い合わせ先:ズー
■動作環境:Windows 9x/Me/2000,Pentium200MHz以上(PentiumII/233MHz以上推奨),メモリ32MB以上(64MB以上推奨),空きHDD容量200MB以上

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