[E3 2004#032]手堅いFPSを制作してきた開発チームの独自プロジェクト「Pariah」 - 2004/05/15 01:03

 ここ数年にかけて,Epic Games社の弟分として「Unreal」「Unreal Tournament」の開発に大きく関与してきたDigital Extremes社は,もはや今年で創立10年を記念するベテランの開発チームだ。
 ほぼ最初から最後までを自分達で作り上げた「Unreal Tournament 2004」は,人気の出なかった本家「UnrealII」に替わる看板ソフトとして現在も多くのファンを獲得している。それで自信をつけたのか,3Dアクションゲームを手がけるようになって以来,初めての独自のストーリーやアートを使った最新FPS「Pariah」を開発中だ。
 発売元は新参のGroove Games社で,2005年初頭にはリリースされる見込みだという。

 このPariahは,太陽系が植民地化された近未来が舞台で,ジャック・メイソンという名の若い医師がプレイヤーの役どころとなる。生きる意味と目的を失い,酒と麻薬に溺れるだけの毎日を送っていた彼は,乗船していた宇宙船が産業廃棄物で汚染されたため,星全体が巨大な監獄となっていた地球に墜落する。
 もう一人の生き残りで,"サブジェクトB"とだけ呼ばれる病人と共に脱出を図る……というストーリーとなる。面白いのは,落ちぶれた医者だけに,ゲーム開始しばらくは武器の扱いも満足にいかないという設定だ。こうやって,プレイヤーはゲームのイロハを学んでいくことになる。

 Unrealシリーズではないとはいえ,PariahはUnreal Tournament 2004と同じゲームエンジンで制作されており,Shader Model 2.0を利用した美しい爆発やテクスチャ効果が満喫できる。グラフィックスの質感は,デモを行っていた開発者の話によると,デザイナーが意図的に独特な作風に仕上げているというだけあり,水面や壁の光沢がツルツルしたような見た目で統一されている。

 興味深いのは,目の前に現れたNPCが,全員プレイヤーに銃を向けてくるのではないということである。銃声のする方向に歩いていくと,防御アーマーを着込んだ武装警察や特殊部隊のようなキャラクター達と,それぞれにバラバラな普段着を着た囚人達が銃で戦い合っている。ヘリコプターで追加の特殊部隊員がやってくるような場合もあり,どうやら収容所全体で反乱が起こっているようだ。
 プレイヤーキャラクターの腕前に自信がないゲーム序盤は,この両軍の戦いが終わるまで待ち,傷ついた勝者を射止めるのが賢明だ。こうやって双方が戦い合っているうちにすり抜けて先に進んでいくことも無理ではないようだが,デモ担当者の話では,全員をやっつけていくほうがはるかにたやすい作業であるらしい。

 武器は豊富に用意されており,未来的に味付けされたピストルやショットガン,プラズマライフル,マシンガン,ロケットランチャーなどお馴染みのものが利用できる。シングルプレイヤーモードでは,これらの武器のWECと名付けられたコア部分をアップグレードできるようになっており,あらかじめ設定された段階で向上していく。新しい種類の弾丸が使えるようになったり,スパイパー用のスコープを装着できるようになるとのことだ。
 緑色の光と煙を発する手榴弾も使用でき,敵に命中すれば瞬時に爆破するし,外れても付近の地面で数秒経ってから爆発する。もちろん,キャラクターAIは手榴弾の場所に反応し,足早に逃げたり迂回したりすることも忘れない。キャラクターが被弾すれば,Havok物理エンジンの効果によって手足をグニャグニャと折り曲げながら吹っ飛んでいく。手足が妙な方向に曲がっていたりするのが気持ち悪いので,今後のチューニングには期待だ。
 特筆すべきは負傷によってヘルス値が減った場合の処置で,プレイヤーキャラクター自身が携帯式の治療器具を常時もっており,わざわざ探しに行く必要がないことだろう。左手で握り,そのまま手のひら部分に針を刺し込むようなアニメーションで,ヘルス値を序々に回復させていく。ただし,20ポイント以上治癒する場合はこの治療薬の影響でめまいがするという設定があり,一定時間目の前がもやのかかったような状況になってしまう。これでは敵と満足に戦うこともできないため,マルチプレイヤーモードでもこまめに治療したり,安全な場所に隠れて治療したりしなければならないというわけだ。

 Digital Extremes社だけに,マルチプレイヤーモードもしっかりと用意される見込みで,デスマッチ,キャプチャー・ザ・フラッグ,Onslaught,シージモードなどUnreal系のソフトにあるモードが用意される。ジープなどの乗り物も登場するが,こちらはマウスでカメラを向けた方向に向かって走るような,「Halo」風の操作が採用されていた。
 発売は2005年の春が予定されており,もう1年ほど待つ必要がありそうだ。(奥谷海人)

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