[E3 2004#004]HL2エンジンを使ったアクションRPG決定版「Vampire the Masquerade」 - 2004/05/13 15:05


Vampire the Masquerade:Bloodlines
「Half-Life 2」のSourceエンジンを使ったアクションRPGの決定版

 今年も「Half-Life 2」が業界内外で大きな注目を浴びているが,Activisionからリリースされる予定の「Vampire the Masquerade:Bloodlines」も,Valve Software社が開発したSourceグラフィックスエンジンを使ったソフトの一つだ。
 この作品は,White Wolf社の人気テーブルトークゲーム「Vampire the Masquerade」をライセンスしたもので,ロサンゼルスの闇の世界を舞台にした少し色気のあるゴシック風3DアクションRPGである。
 テーブルトーク版では計13種のクランが登場するが,PC版でプレイヤーキャラクターとして登場するのは七つのみ。ロサンゼルスのヴァンパイア集団をまとめるためプリンスと呼ばれるリーダーがやってきたことから,それぞれのクランが勢力拡大や生き残りをかけて派閥争いするという内容だ。もちろん,プレイヤーキャラクターもヴァンパイアであり,その社会の一員としてストーリーに絡んでいく。
 キャラクター設定では,まずそれぞれのクランに用意された男女のキャラクターの中から,髪型や服装など好きな容姿を選んでいく。それぞれに体力や敏捷性,社交/カリスマ性,さらにはThamaturgyと呼ばれるマジック値などを示す基本パラメータが用意されており,ポイントを振り分けることで細かく設定するようになっている。また"銃器使用"などよくあるものから"説得" "鍵のピッキング"などまで,得意とする特殊能力も異なっており,レベルアップするごとに好みのスキルを伸ばしていくことが可能だ。

 今回会場で行われたのは,ロサンゼルスのダウンタウンのマップを使ったデモンストレーション。Bloodlinesでは,ロサンゼルス界隈の四つの地域に分けられた"ハブ"と呼ばれるマップが形成されていて,2003年のE3からGenConにかけて紹介されていたのはハリウッドからサンタモニカにかけてのマップだったのだ。
 ダウンタウンの,殺風景な"夜のオフィス街"といった感じの景色が描かれており,時折ホームレスがトボトボと歩いていたり,電灯の下に"いかにも"な女性が立っていたりする。彼らは,プレイヤーキャラクターのヘルス値を示すブラッドレベルが減ってきたときに,"餌食"として吸血できる重要なゲームの要素でもある。ねずみや飼い犬などの血でもオーケーだが,回復量は少ない。また人間の中でも職種や性別で血の品質(?)に差があるようだ。
 なお,吸血時に周りにほかのNPCがいれば大騒ぎになって,あげく"警察沙汰"になったりもするので,周囲を確認して体力補填する必要もある。また,画面上部に現れるパラメータを確認しながら,殺さない程度に血を残してあげるのも重要だ。こうすることで,プレイヤーキャラクターの正気を示す"ヒューマニティレベル"が高くなり,逆に吸血による殺人を繰り返しすぎるとゲームオーバーになってしまう。

 Bloodlinesのデモは,まずNPC達が踊り狂うバーの中にいるヴィーナスという仲間を見つけ出すというシーンに。通常の第三人称ではなく第一人称のカメラ視点へと変化し,実際にNPCに面と向かっての会話が始まった。
 仲間といっても,黒髪に黒い口紅,黒のタイトなドレスという,アメリカでは典型的な"ゴス"と呼ばれるマリリン・マンソン風の黒ずくめファッションで,別のクランに属している女性だ。しかしデモで使っていたキャラクターはTremereという説得の得意な伊達男であるため,選択式で複数から選べる会話で最も効率の良いものが青時に変化しており,会話を進めやすくなっていた。
 そうやって話を進めるうちに,始めは乗り気でなかったヴィーナスの表情も軟らかくなり,プレイヤーキャラクターに興味のあるような言葉を口にしたり,自分の胸を両脇からつかんで揺らせて見せたりする。眼球が動くのはもちろん,目尻や口元は微妙に変化するし,軟らかそうな肉感で表現された豊満な胸のポリゴン・デフォメーションなど,Sourceエンジンの高度な技術がムダに活用されている気もするが,そこらへんは,さすがパーティメンバー中の女性に○を売らせて小銭を稼ぐという凶悪なオプションがあった「Fallout」を制作したTroika Games社の作品,といったところか。

 情報をひと通りしゃべったあと,ビーナスはハッとした表情でしゃべりすぎたことに気づく素振りも見せるが,後の祭り。プレイヤーのメインミッションは人探しだが,そのために廃墟になったチャイニーズシアターにいるガーゴイルと対峙しなければならないことを聞き出す。また,そいつを倒すための武器は,路地裏にいるという太っちょのラリー(Fat Larry)という武器商人から入手できること,チャイニーズシアターには下水道を使うのが近道ということなどが分かった。
 この情報を聞き出した時点で,"説得"という技能を使ったことから経験値が増え,レベルアップ。そのポイントを"ピッキング"に追加。そうして以前には開かなかったドアの鍵を外してヴィーナスのラップトップを見つけ,得意の"ハッキング"でアクセスしてさらなる情報を入手。ガーゴイルと戦うには,銃器よりもブラント(棍棒)系の武器を使ったほうが有利と分かった。ただ単に戦闘だけで経験値を稼ぐのではなく,このように戦わなくても各種スキルを使っていくだけで毎回ポイントで得られるようになっており,十分に成長させられるのも魅力の一つだ

 デモの担当者は,ここで開発専用コードを使ってTremereからBrujahという体育会系クランのキャラクターに変更。もとろん製品版では外される機能だが,ゲームの全体的な様子を紹介するための手段とのことだった。
 太っちょのラリーは,バーを出たところの路地裏で簡単に見つかったが,社交性の低いBrujahでは,会話選択に失敗して相手を怒らせるようなこともあるようだ。ラリーからは,ピストルと弾丸,防御能力の高い皮ジャンと,ブラント系のジャックハンマーを購入。売買システムはチラッとしか確認できなかったが,「購入しますか?」というような確認メッセージは表示されていなかった。
 "街に立っている女性"から血を吸って体力を補填したあとは,マンホールを見つけて下水道に侵入。ここでは,(別クランのヴァンパイアの特殊技能である)"瞬時移動"を使って高速で移動する敵と遭遇することもあるようだ。
 そうしてチャイニーズシアターのロビーに辿りつくが,例のガーゴイルはブラッドマジックの失敗で生を受けたという巨大な石像で,まるで中国の秦時代の"兵馬傭"のような鎧を着込んでいる。Brujahのキャラクターであるため説得はできず,結局戦闘が始まった。
 ガーゴイルは,巨大な斧を振り上げて襲いかかってくる。吹き抜けになったロビー2階に逃げても通路を破壊し,床や柱が瓦礫となって崩れ落ちる。Havokエンジンの物理効果らしく,階段に落ちた破片がずり落ちたりするし,プレイヤーは椅子やフェンスなどを手にとって投げつけたりすることも可能だ。
 ただ,ジャックハンマーに弱いガーゴイルをメインシアターに誘い出すために移動したときも,ガーゴイルは壁を突き破って突進してきた。デモでは,先ほど敵が使っていた"瞬時移動"を使って動きの遅い相手を連続攻撃し,7打ほどで石のボディを崩すことができた。

 今回のデモは,ゲームの大まかな流れがよく分かるうえに,Sourceエンジンの特性やTroika Games社らしいタッチも存分に味わえる満足のいく内容だった。開発者は「Half-Life 2よりも早く出ることはない」としながらも,2004年中のリリースになると話していた。 ゲームはほとんど完成しているらしく,本家の発売が遅れている分だけチューニングにかける時間も増えるという嬉しい誤算もあるようだ。
 販売はActivisionで,NPCのセリフはボイスで行われているために完全翻訳にも期待したいところだが,ローカライズには時間のかかりそうな気配。しかしマルチプレイヤーモードは,ヴァンパイアvs.ヴァンパイアハンターなど興味深いモードも考慮されており,年末の購入リストには加えておきたい一作だ。(奥谷海人)

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© 2004 White Wolf Publishing, Inc. Vampire: The Masquerade, White Wolf and the World of Darkness are registered trademarks and Vampire: The Masquerade - Bloodlines is a trademark of White Wolf Publishing, Inc. Game code © 2004 Activision, Inc. and its affiliates. Published and distributed by Activision Publishing, Inc.


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