アシスタント・プロデューサーを直撃インタビュー

　Vivendi Universal Games社のブースで公開されていたのは，「Middle-Earth Online」。"Asheron's Callシリーズ"でお馴染みのTurbine Entertainment社による最新作で，名前から分かるとおり，J・J・R・トールキンのファンタジー小説の名作「The Lord of The Rings」（指輪物語）のMiddle-Earth（中つ国）でのアドベンチャーが楽しめる期待のMMOPRGである。
　本作のアシスタント・プロデューサーを務めるVivendi Universal Games社のジェームス・アルターバーグ（James Alterburg）氏に，Middle-Earth Onlineの開発状況を聞いてみた。

■最新のグラフィックスで指輪物語の世界での冒険を堪能
4Gamer.net（以下，4G）：
　Middle-Earth Onlineの時代設定は，「指輪物語」における，いわゆる"リングクエスト"と同じ時期のようですね。

James Alterburg（以下，JA）：
　そうですね。プレイヤーがMiddle-Earth Onlineの世界に入るのと同時期に，フロド達がリングクエストに出発するという設定なんです。小説に描かれたメインストーリーを邪魔しないようにしながら，善と悪に分かれた戦乱が巻き起こっている中つ国で，プレイヤーが自分の意思に従って行動していけます。

4G：
　では，物語の中心人物達は登場しないのですか？

JA：
　例えば，フロド達は「滅びの山」に出かけているので会うことはできませんが，中つ国に残っているキャラクター，例えばビルボであればNPCとして登場する可能性はあります。またガンダルフであれば，クエストを提示してくれるNPCとして登場するかもしれません。このあたりは，まだ契約上許される範囲がどうかを検討している状態なのです。

4G：
　なるほど。Middle-Earth Onlineは，中つ国のどの範囲くらいまでが表現されているのですか？

JA：
　全部ではないですけど，西岸の「エリアドール」から，東は「霧ふり山脈」。北は氷に覆われたフロチェルの湾岸から，南は「ゴンドール」近辺の「白の山脈」くらいまでですかね。この中には，もちろん"ホビット庄"や"モリア"なんかも含まれいて，地区として表現されるのは12から15マップくらいですね。
　「アンデュイン河」以東は除外されていますが，リリース後のアドオンなりで拡張する予定ですよ。

4G：
　そのマップには，物語で登場しているもの以外の，オリジナルのモンスターや野獣は含まれているのでしょうか？

JA：
　いや，基本的にはすべて物語に登場するものばかりです。小説中に会話でしか表現されていない生物も合わせれば計30種類くらいにはなりますから，その中でバリエーションを増やしているんですよ。

4G：
　見せていただいたデモでは，マップ中のモンスターが少ないようですが。

JA：
　Turbine Entertainment社の前作「Asheron's Call 2」でも指摘されている点ですね。彼らもパブリックエリアでの"モンスターの取り合い"には反省しているようで，Middle-Earth Onlineで使われるゲームエンジンには，スポーニング・ポイントの増加やマネージメントに大きな改良が行っています。とくに，大量の敵が立ち向かってくるのが指輪物語の醍醐味の一つですから，それをうまく表現できるようにしたいですね。

4G：
　ゲームエンジンはAsheron's Call 2と同じものですか？

JA：
　すべてを書き直しているわけではないですが，今話したような改良をさまざまな部分で行っていて，「Turbineエンジン2.8」と呼んでいるくらいです。
　グラフィックスがはるかに向上していながら，フレームレートの低下やラグの発生を最大限に防げるような工夫を行っています。MMOにおけるゲームデザインやコミュニティ育成のノウハウなんかも含めると，これはTurbine Entertainment社の第3世代エンジンといっても過言ではないですね。

■仲間達とフェローシップを組んで，自分たちだけのクエストが楽しめる
4G：
　プレイヤーが選択できる種族は4種類ですね。

JA：
　はい。ヒューマン，エルフ，ドワーフ，それからホビットですね。種族が少ない分だけそれぞれ特徴がハッキリしていて，非常に異なった感覚でプレイできると思います。

4G：
　キャラクタークラスは？

JA：
　全部で15種類です。クラスは種族によって決まっていて，そのプレイスタイルで次第に進化していくようなシステムになっています。
　例えば，善行のクエストを選択するエルフのスカウトであれば，レベルが高くなるにつれてアーチャーになりますが，悪い行いを続ければアベンジャーへと成長します。ほかにも，ヒューマンのセージであればソーサラーかネクロマンサーへと分岐していくことになります。

4G：
　もちろん，パーティも組めるようなシステムになっているんですよね？

JA：
　ええ。Middle-Earth Onlineでは「フェローシップ」と呼んでいて，最大9人でのグループで行動できます。もちろん，本家のフェローシップと同じような構成にすることも可能ですよ。

4G：
　フェローシップを他種族と組むことの利点はなんでしょう？

JA：
　例えば，種族やクラスによって，NPCの中にも敵愾心を感じるものや，クエストをくれないようなものもいます。実際，指輪物語では種族間の隔たりが表現されているので，それをゲームに取り込んだのです。そういう場合，他種族のキャラクターとフェローシップを組んでいれば，ちょっと変わったクエストもプレイできるようになるかもしれませんね。
　もっとも，Middle-Earth Onlineには各キャラクターに"評判"というパラメータがあって，その地域の住人の利益になるようなクエストをしたり付近のモンスターを駆逐したりすることで，そのキャラクターが名声を得て，その結果多種族から信頼されることも可能です。

4G：
　パーティプレイはどうでしょう。やはりいわゆる"プライベートエリア"はありますか？

JA：
　まだ見せられる段階ではないですが，ありますよ。Middle-Earth Onlineでは「プライベート・エンカウンター」と名付けており，ソロやパーティだけで楽しめるように，サーバーの1区画をあてがって，クエストを楽しめるようになります。
　ちなみに，ギルドは「キンシップ」と呼ばれることになります。善と悪に分かれたギルド戦争なども起こるでしょうね。

4G：
　なるほど。ところで，基本パラメータが3種類ありますね。

JA：
　一番上の2色に分かれているのがヘルスと忍耐，真ん中がマジック，一番下が特殊ムーヴです。特殊ムーブ値は攻撃を繰り返すことによって溜まり，種族やクラスによってさまざまな攻撃や魔法を繰り出すことができます。

4G：
　分かりました。ありがとうございました。


　小説「指輪物語」のファンも，映画でトールキンの魅力に接した人も，十分に期待できそうな本作。しかし気になるのは，開発があまり進んでおらず，リリース予定が2005年の冬……つまり丸2年も待たなければならないことだ。そのときまでに映画による人気が継続しているかは疑問だが，"次の次"にプレイするMMORPGの候補になり得るのは間違いないだろう。（奥谷海人）

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