マイクロソフトが「ライズ オブ ネイション」カウントダウンイベントを開催 - 2003/06/16 18:41

 マイクロソフトが,2003年6月14日に東京は池袋の古代オリエント博物館において,「ライズ オブ ネイション 〜民族の興亡〜」(以下,RoN)の発売カウントダウンイベントを開催した。

 会場である古代オリエント博物館は,古代のエジプト文明やメソポタミア文明などといった,古代オリエント文化に関連するさまざまな出土品を扱った博物館。館内には,当時の生活の様子を表わす土器や装飾品が展示されているほか,歴史年表や古代都市の遺跡の簡単な模型など,古代から現代までの"歴史"を扱った本作のファンにとっては興味深い品々を見物することができる。

 会場内には,多くのプレス関係者ほか,RoNの予約者の中から抽選で選ばれた100名ほどのファンなど,総勢で150〜200人ほどが集まり,本作への期待と注目の高さがうかがえた。


●古代西アジアの研究者が語る,国家が戦いに勝つ条件とは?

 イベントは,古代オリエント博物館を代表した石田恵子氏と宮下佐江子氏の両名の挨拶によって始められた。
 その中で石田氏は,「ゲームというと私たちは,羊の骨や,メノウ/ラピスラズリなどの鉱石を使った,古代の王達が嗜んでいたゲームに思いを馳せてしまいます」と語った。
 また司会者の「古代では,どのような点に注意すれば戦争で勝てるのか?」といった質問に対しては,「国家の勢力というのは,何が使えるかという部分に左右されます。例えば,ある国では鉄製の武器を使うことによって勢力を伸ばしましたし,貴重な鉱石によって富を得た国もありますから」と答え,歴史的な観点から見た"資源"の重要性についての見識を語ってくれた。
 ちなみにRoNでも,マップの配置によって木材や鉄が不足するというコトがあったりするほか,レア資源という特殊な資源(ダイヤや羊毛,鉄,ウランなど)の概念があり,それによって国家の経済力が変化してしまうという面白さがあり,筆者としては,石田氏の話してくれたような要素が実際にゲームの中でも再現されていることを思い出した次第。歴史ゲームという観点から見ても,RoNが非常に練り込まれた作品であると再確認した。

 司会者の「RoNで遊ぶとしたら,どの文明を使って世界制覇を狙いますか?」という質問に対して,石田氏と宮下氏は,「私達は主に西アジアを研究していますから,エジプトとかでしょうか。でもメソポタミア文明とかあればもっと嬉しかったんですけどね(笑)」とコメントし,挨拶を終了とした。


●「NHKスペシャル 文明の道」のチーフ・プロデューサーが語るRoNの面白さ

 次に壇上に上がったのは,NHKエンタープライズ21で「NHKスペシャル 文明の道」などのCG制作を担当するチーフ・プロデューサーの野島正宏氏。同氏は,以前に月刊アスキーの編集者としてPCゲームの担当をしていた経歴を持ち,過去誌面で「Civilization」や「Colonization」などを紹介して来た人物である。

 簡単な自己紹介から始まり,そこで自身が大のストラテジーゲームファンだという話に続いて,「私がPCゲームを担当していたときに登場したのが,RoNの起源にあたるCivilizationです」と話を進めた。
 話の中で野島氏は,「CivilizationシリーズやColonization,そして『Alpha Centauri』などが面白かったゲームですね。あとこれは個人的趣味なんですけど,『Close Combat』というゲームも好きでした」と,なかなかのヘビーゲーマーぶりを披露。実は筆者もそれらのゲームにハマッた口なので,妙な親近感を覚えてしまった。
 野島氏は,「ターンベースの戦略ゲームは,ゆっくり考えられるという点が長所だと思います。リアルタイムストラテジー(以下,RTS)だと,ゆっくりしているとどんどん敵に攻め込まれてしまって大変ですからね」とターンベースのゲームの長所を説明し,続けて「RoNは,その点が比較的ゆったりしているというか,じっくりと考える要素もあるところが面白いと思いますね。もちろんリアルタイムだから忙しいんですが」とコメント。また氏は本作について「リズムがいいですね。ターンベースのゲームだと,遊ぶのにとにかく時間がかかってしまって大変なんですけど,RoNではそのような欠点が解消されていて気分良く楽しめる」と,ゲームシステムについての考察も述べた。


●東京大学名誉教授/ベストセラー作家の養老孟司氏はPCゲームファンだった!?

 スペシャルゲストの中でも,とくに話術巧みに会場を沸かせたのが,東京大学名誉教授であり作家としても活躍中の養老孟司氏。養老氏は,解剖学者/脳学者の第一人者でありながら,ベストセラーである「バカの壁」の著者としても有名な人物だ。
 壇上に上がるや否や養老氏は,「昔からゲームはたくさん遊んできたんですよ。例えば知っている人が少ないかもしれないけど,"平安京エイリアン"とか(笑)」と,懐かしいフレーズを出して,会場に集まった人達の笑いを誘った。(主にメディア関係者にウケていたような)
 なんでも,養老氏はPCゲームを中心にさまざまなゲームを楽しんでいるらしく,司会者の「どのくらいゲームを遊ばれてるのですか?」という質問に対しては,「頭がくたびれて原稿を書く気力がない,だけど眠くないときとかは遊んでます。要するにほとんど毎日やっているということなんですが」とコメントし,これまた会場を沸かせた。
 養老氏は,「遊ぶ時間は,大抵は一日1〜2時間程度。だけど熱中しちゃったときは一日中遊ぶこともある」と話を続け,その話のなかで「若い頃は,ゲームを遊びすぎで女房に怒られて,マリオをやってたときなんかは"離婚だ!"なんて話にもなったり(笑)」と,自身のゲーマー体験を語ってくれた。また養老氏は,RoNを遊ぶためにわざわざPCを新調したのだという。

 RoNについて,養老氏は「6000年を1時間で体験できるはずはなくて,このゲームは本質的に嘘の世界なんです。ハリー・ポッターやほかのファンタジーもそうだけど,馬鹿らしいと思いつつも楽しめてしまうのは,それが完全に嘘だと分かっているからなんですよ」と独自の論理を展開。続けて「現在の世界の嫌なところっていうのは,本当か嘘か分からないところです。裏があるんじゃないかと勘ぐってしまって,それがストレスになる。でもファンタジーな娯楽というのは,初めからそれが"嘘"だと分かっているので,居心地がいい。ストレスなく楽しめてしまうんです」と,養老氏ならではの脳学者的な分析を披露した。

 その後は養老氏の独壇場となり,ストラテジーゲームを脳科学的見地から見てどう思うかについては,「最近だとゲーム脳がどうとか言われてるけど,結局ゲームのリアリティとは何かだと思う。例えば,今の戦争なんかテレビゲームみたいなものです。ブッシュなんかは,自分で戦場に行くわけでじゃなく,送られてくる映像なり数値なりを見て判断していく訳でしょ? それって,僕がゲームを遊んでいるのとなんら変わらない。戦争なんてやめて,ブッシュとフセインにはゲームを遊ばせてればいいんですよ」とコメント。

 最後は,「ゲームとかでも,予定通りいけばとても嬉しい。けど人生とは,シミュレーションと完全なカオス(混沌)の中間にあって,決して予定通りにはいかない。だけどそこが楽しい部分だと思う。ゲームに関していえば,僕はゲームのシミュレーションとして"最適解"を探す部分に楽しさを感じている。カッチリしたシミュレーション的な,予定通りいく面白さはゲームで楽しんで,予定通りにいかない面白さを現実世界で味わう。ゲームは,そういう風にうまく使っていくのがいいということです」と語り,司会の「では,ゲーム(RoN)をどんどん遊ぶべきということですね!」という発言に対しては,「さあ,知らない。責任は持てない(笑)」と,場内を笑わせつつトークショウを締めくくった。


●有名プレイヤーを使った対戦イベント

 軽い食事のあと,「Age of Empires II:The Conquerors」の世界チャンピオンHalen(forGamer所属)と,「Age of Mythology」日本チャンピオンのZyatou氏,そして先ほどトークショウに出演した野島氏の三人による,RoNのデモプレイが行われた。

 デモプレイの前に,司会者がHalen,Zyatou氏の両名にRoNをプレイしてみた感想を訪ねたところ,Halenは「戦術的な方向性から戦略方向性にシフトしている。陣取り的な要素というか,国境の概念が難しい」とコメントし,Zyatou氏は「従来のRTSだと,多分に"先手必勝"なところがあったが,RoNでは,国境や補給といった概念によって,それをうまく軽減している」と,ゲームのルールについて考察を述べた。

 デモプレイは,HalenとZyatou氏の1on1形式で行われた。実況を野島氏が担当し,戦況の様子を報告しながら,ゲームの要素について解説していった。
 さすがに発売前のタイトルということで,HalenとZyatou氏の両者とも,多少とまどいながらのゲーム展開となっていたが,そこはさすがに日本を代表するプレイヤーの二人。ツボを押さえたゲームプレイで,内政や軍隊を順調に拡大させ,時代を進化させていった。

 中世の時代に入ったあたりで,両名の国境が接触。散発的な戦闘を繰り返しながら,一進一退の攻防となり,双方ともに決定的な局面を迎えないまま,対戦は時間切れの引き分けとなった。

 最後は,マイクロソフトの風間氏が登壇して挨拶を行い,その中で「RoNでも,いわゆる"公式大会"を計画しています」と発表。続けて「RoNはチーム戦が面白いかなと思うので,大会もチーム戦にしようかとか,いろいろと考えています」と,大会についての構想の一端を語ってくれた。

 RoNは,従来のRTSの集大成的な雰囲気を感じさせる,非常に完成度の高い作品だ。筆者などは,日本語版を待ちきれず,英語版を購入して一足先に遊んでしまっているのだが,RoNの対戦は想像以上に面白く,暇さえあれば本作の対戦を遊んでしまう毎日7月11日に予定されている日本語版の発売によって,より多くのユーザーが本作を遊んでくれることを期待するばかりだ。(TAITAI)


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