「World of Warcraft」（以下，WoW）は，ネットゲームブームの火付け役ともなった「Diablo」や，お隣の韓国だけでも300万本以上売れたという「Starcraft」など，数々のヒット作を手掛けるBlizzard Entertainment社のMMORPG。同社の人気シリーズである「Warcraft」の世界観を踏襲した作品で，分かりやすいクエストシステムや連携魔法システムなど，現在判明している情報だけでも非常に興味がそそられる注目のタイトルである。

　最初に発表されてから既に半年以上経過している本作だが，作品が持つ独特のオーラはもちろん，ビジュアル的な面においても全く見劣りする様子がないのは，さすがにBlizzardのタイトルといったところ。考えてみれば，散々開発が伸びた「Warcraft3」も，技術的には決して最新と呼べる状態でこそ無かったが，テクスチャや派手なエフェクトなどを効果的に使い，今なお画面を見て「派手だなぁ」と感じられる作品だ。単なる技術力比べに走りがちなグラフィックスという面に関して，Blizzardは"ゲーム面白く見せる術"という技巧的な部分に重きを置いているのかもしれない。

　展示されていたバージョンでは，フィールドを走り回ったり，外を闊歩しているクリーチャーを殴りつけたりと，ゲームの基本部分を確認できた。開発途中のゲームということで，まだ少々ぎこちない部分こそあれ，操作性は極めて良好。Blizzardのスタッフに進められるがままにプチ冒険を楽しんでいたところ，大きな熊を一匹殴り倒すことに成功した。まぁ，だからといって特になにもないワケだが，大した説明もなく一連の操作を迷うことなく出来たという事実は，インタフェースやゲームシステムが非常に優秀だという証明であると言えるのではないだろうか。

　また今回のE3では，新たな種族として「ナイト・エルフ」が発表され，これでWoWで扱える種族は，ヒューマン，オーク，ドワーフ，トーレン，ナイト・エルフの5種となった。個人的に，今後アンデッドが種族として加えられるのかどうか気になるところだが，燦々と降りそそぐ太陽の下をアンデッドが走り回る姿なぞは想像しにくく，MMORPGというジャンルでは，流石にアンデッドはNPCキャラになりそうな予感。ただもし闇夜しか歩けないとしても，アンデッドをキャラクターとして使えれば，それだけでかなり画期的なんじゃないかと考えてしまうのも事実だ。アンデッドをキャラとして使えるだけで，少なくとも筆者はWoWを問答無用で遊んでしまいそう。個人的には，死者系のLichか悪魔系のDreadLordになってみたい。

　さらに初めて発表されたフィーチャーとして，"乗り物による移動"が可能だという点がある。Warcraft3などでもお馴染みの「Zeppelin」や「Gryphon」，あるいは海を航海する「Ship」に乗り込むことで，世界をより素早く移動できるとのことだった。
　これらの乗り降りできる地点は固定だそうだが，ブース内で確認できたのは，キャラクターがGryphon小屋に入ると，料金の記された一覧が表示され，目的地を指定するとGryphonがバサバサっと旅立つ様子で，さしずめ「Dark Age of Camelot」の馬の扱いに近い印象。遠ければ遠いほど高い料金が請求されるほか，どうも一つの乗り場からすべての地点へ移動できるワケでもないようで，遠くの地域まで移動するには，いわゆる"乗り継ぎ"が必要になりそうだ。広大な"世界を感じる"楽しみもMMORPGの重要な部分だけに，安易に便利すぎるシステムを搭載しない方向性は正しい選択といえるだろう。
　また馬などの動物に乗ることもできるそうで，これらは飼い慣らして自由に扱えるよう。詳細は明らかにされなかったが，Warcraft3のキャラクターから想像すると，オーク族のレイダーが乗っている「狼」や，エルフのヒーローが乗っている「虎」あたりに乗ることができそうだ。ゾーンとゾーンの間をシームレスに移動できる本作では，乗り物に乗って大地を駆け回るのは，さぞかし気分がよいことだろう。

　今年の年末にもβ（αかも）が噂される本作。今回のE3での印象を考える限り，最も期待の持てるMMORPGなのは間違いない。必要以上に開発が延びないこと（Blizzardはそれだけが心配だ）を祈りたい。
　ちなみに今回，スクリーンショットも多数公開され，町の様子や乗り物，キャラクターの詳細な画像が見られるので，興味があるユーザーはぜひそちらも参照してほしい。（TAITAI）