Matroxは日本時間の
2003年4月23日に,"インフォマジックと共催"という形で,同社の新GPU
「Parhelia-LX」及び,その搭載ビデオカード製品の発表会を開催した。
■Parhelia-LXはParhelia-512の派生下位モデル Parhelia-LX(以下,PLX)のコアアーキテクチャは,基本的にはParhelia-512(以下,P512)コアと同じで,両者は製品ラインナップの上下関係を設定するために内部機能のいくつかを削減した「同一コア派生製品」である。
またPLX GPUにも複数のモデルが存在し,下位モデルを搭載したビデオカード製品を「Millennium-P650」,上位モデルを搭載したものを「Millennium-P750」としている。
両製品は650/750というモデルナンバーから分かるように,ビデオカード製品としては「Millennium-G550」の上位後継モデルに相当する。
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Matrox社セールスマネージャのJohn Quach氏 | Parhelia-LX搭載ビデオカード「Millennium-P750」 |
■Parhelia-LXとParhelia-512の相違点 PLXとP512は同一コアなので,トランジスタ数はほぼ同じ8000万で,ダイサイズも変わらない。製造プロセスはP512同様の0.15μmで,台湾UMCで製造される。
PLXとP512の違いを以下にまとめておこう。
・頂点シェーダユニット:Parhelia-LX:2基
Parhelia-512:4基
・ピクセルレンダリングパイプラインParhelia-LX:2本
Parhelia-512:4本
・ビデオメモリインタフェースParhelia-LX:128ビット
Parhelia-512:256ビット
・AGPインタフェースParhelia-LX:8X
Parhelia-512:4X
(PLXのほうが世代が上のため,AGPがP512より進化しているのが面白い)
PLXのビデオメモリは,バス幅がP512の半分になっているものの,容量は最大256MBとP512と変わらない。ただし製品ラインナップの関係上,PLX搭載ビデオカードのビデオメモリは64MBまでになるとのことだ。
なお,かなりアグレッシブに機能が削減されているPLXだが,P512の"最大の特徴"ともいえる「適応型テッセレータユニット」は残っているので,「ディスプレースメントマッピング(D-MAP)」には対応している。
余談だが,このD-MAP機能はParheliaシリーズのほかATIの「RADEON 9500(〜9800)」シリーズがサポートしているが,開発ツールのサポートが不十分ということもあって,DirectX 9の新フィーチャーの中でも,3Dアプリケーション開発者からかなり冷遇されている。普及価格帯のPLXシリーズがこの機能をもったことで,D-MAP機能の積極的な活用を期待したいところだが……。
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Parhelia-LXはディスプレースメントマッピング機能をサポートする | (1)水面からの光筋の投射を表現した,光沢マップテクスチャ | (2)ベーステクスチャ |
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(3)パーピクセルバンプマッピング用の法線マップ | (4)スペキュラマップ | (1)〜(4)までのテクスチャをシングルパスで処理できるのが,Parheliaアーキテクチャの特徴 |
■Millennium-P650とP750の違い 前述したが,PLXを搭載したビデオカード製品はMillennium-P650(以下,P650)とMillennium-P750(以下,P750)の二種類がリリースされる。
上位モデルと下位モデルの違いは,
●Millennium-P650・2画面出力サポート
・テレビ出力サポート
・3DパフォーマンスはMillennium-P750よりも15%ほど低い
●Millennium-P750・3画面出力サポート
・テレビ出力サポート
・3DパフォーマンスはMillennium-P650よりも15%ほど高い。Parhelia-512の半分の性能
……となっている。
PLXシリーズのコアクロック/メモリクロックは公開されていないが,3DパフォーマンスがP512の半分ということは,P512に対して相当性能が下がっていると予想される。ちなみにParhelia-512のコアクロックは220MHz,メモリクロックは(DDR)550MHzだ。
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Matrox社主力製品のコアアーキテクチャ比較。2パイプライン構成というのはNVIDIA GeForce 2シリーズ相当で,パフォーマンスも大体同じぐらいだろう | 描画エッジを重点的にアンチエリアス処理する「フラグメントアンチエリアス処理」をサポート | 3画面ゲーミングは機能的には対応するが,パフォーマンス的にきつい? |
■Parhelia-LXは誰のために? PLXシリーズのパフォーマンスが元々GeForce 3相当だったP512の半分だとすると,最大性能は期待できない。
GPUの発表会でありながら,他社の既存GPUとの性能比較について一切触れないということは,もはやMatroxは"GPUの性能競争"に関心がなくなってしまったと考えられる。Parheliaには"幻日(げんじつ)"という意味があったわけだが,PLXには"たそがれ"といったイメージを浮かべてしまうユーザーが多いかもしれない。
Matroxとしては
「"1基で3画面出力が可能なビデオカードの低価格版"としての価値を見出してほしい」のだと思うが,3画面出力をサポートするのは上位のP750のみで,しかも標準価格が235ドルというのはそれほど安価とはいえず,カジュアルユーザーへのアピールが弱い。
結局リアルタイム3Dグラフィックスを処理させるというよりは,DCC(Digital Contents Creation)ツールの"3画面フレームバッファ"として利用するのがメインとなるだろう。
また,P650は標準価格169ドルとそれなりに安価路線だが,
Parheliaシリーズ最大の特徴である3画面出力をサポートしていないのが痛い。Matrox社セールスマネージャJohn Quach氏は
「P650はファンレス仕様であるため,静音PC用として最適である」と説明するが,すでにATI「RADEON 9200」のファンレス仕様モデル,NVIDIA「GeForce FX 5200」のファンレス仕様モデルがあるため,訴求力が強いとはいえない。この価格帯で3画面出力機能をサポートしていれば突破口も見出せたと思うのだが……。
なお,画質はP650/P750共に"Matroxクオリティ"が継承されており,波形レベルでの美しさが保証される。ちなみにこのMatrox画質は,医療や映像制作を始めとした産業界から高い評価を得ており,このシェアを維持する目的もあって,Millennium G200/G450/550は今後も製造が続行されるとのことだ。Matroxの最後の砦はこの"Matrox画質"ということになるかもしれない。
PLX搭載ビデオカードの出荷時期は,5月末からを予定。さらに今年夏頃には,P512の新リビジョンを予定している。こちらは基本的な設計リファインとAGP8Xに対応させるのみのマイナーチェンジになるとのことだ。(トライゼット西川善司)
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RGB10ビットカラーモードをParhelia-512同様にサポート。RAMDACも10ビット対応だ | "波形レベルで美しい"というMatrox質は,Parhelia-LXでも健在 |
(写真)Matrox社の主力製品ラインナップ比較。Millennium-P750のウリは,ずばり「3画面出力ビデオカードがこれまでより2万円安く買える」というところにある