ついにベールを脱いだGeForce FX。性能も価格も一級品 - 12/08 22:02


NVIDIA 新世代GeForce FX発表〜新GeForceは,
元3dfxスタッフとNVIDIAスタッフとの共同プロジェクトだった


■新GeForceはVoodooの遺伝子を受け継いだ
 12月6日(金),NVIDIAは東京都内のホテルでGeForce FXの日本国内向けの発表会を行った。GeForce FXは,すでにアメリカ ラスベガスで開催されたCOMDEX FALL2002にて発表されたものだが,日本国内では初お披露目となる。
 まず驚かされたのは,GeForce FXの開発は,NVIDIAのスタッフとVoodooシリーズで名を馳せたゲーム向けPC用3Dグラフィックスカードメーカー3dfx社のスタッフとの共同で執り行われたという事実だ。3dfx社は2000年12月にNVIDIAに買収されているが,NVIDIAに吸収された後,具体的に「3dfxのスタッフが開発に参加したプロダクト」と公言されたのはこのGeForce FXが初めてだ

 さて,名称がGeForce5ではなくてGeForceFXとなっているのにはいくつか理由がある。
 一つは,コアアーキテクチャがGeForce3/4TiのnFiniteFX系エンジンから決別を図り,新コアアーキテクチャCineFXエンジンを搭載したことによる。CineFXエンジンのCineとはCinemaのCineで,これは「映画品質の3Dグラフィックスをリアルタイムで」のメッセージが込められたキーワードだ。
 そしてもう一つの理由は,前述の通り,3d"fx"社のテクノロジーが活用されているためだ。
 新GeForceはVoodooの遺伝子を受け継いだGeForceといってもいいかもしれない。

■コアクロック500MHz! メモリクロック1GHz!

 総トランジスタ数はRADEON9700を上回る1億2500万個で,TMSCの0.13μmの銅配線プロセスにて製造される。RADEON9700は0.15μmプロセスルールだったこともあり,動作クロックについてはRADEON8500からあまり上がらなかったが,GeForceFXは,コンシューマ向けGPUでは最高クロックとなる500MHz駆動を実現した。
 コアクロックがここまで高いと,組み合わせるビデオメモリの選択も厳しくなるわけだが,これは大胆にもDDRII SDRAMを採用する。DDRIIは,クロックをそのままにデータフェッチ量を従来のDDRの二倍に高めることで,実質的に同クロックの動作のDDR SDRAMの2倍のバンド幅に高めた新世代メモリだ。気になるメモリ動作クロックは1GHzで,これまた歴代のGPUと組み合わせるビデオメモリとしては最高クロック値をマークしたことになる(実際にメモリチップの駆動クロックは250MHz。DDRII動作で1GHz相当)。
 ただしビデオメモリのバス幅は128ビットで,RADEON9700の256ビットと比べると半分ということになる。

■パフォーマンスはGeForce4Ti4600の2倍から3倍

 GeForceFXについての詳しいアーキテクチャ面の話と,プログラマブルシェーダー周りの仕様については「こちら」を参照してもらうとして,ここでは性能面について見ていくことにしたい。
 発表会のプレゼンテーションでは,NVIDIA側で行った各種評価テストの結果が示された。下の画面の真ん中上2枚に注目してほしい。
 2048×1536ドット解像度下のにおけるQuake3のフレームレートはGeForce4 Ti4600の約二倍,3DMark2001SEのピクセルシェーダテストに至っては2.5倍のパフォーマンスを示したとのことだ。
 ゲームユーザーとして気になるのは,このグラフにさりげなく書いてあるDOOMIIIのパフォーマンスだろう。DOOMIIIのベンチマークテストは一般リリースされていないが,NVIDIAとATIは両社ともにid Softwareに技術者を送り込んでDOOMIIIエンジンの開発に参加させているので,データには信憑性がある。このデータによれば,DOOMIIIもGeForceFXでGeForce4 Ti4600の2.5倍高速に動作することを示している。DOOMIIIがGeForce4 Ti4600で快適に動作しなかった場合には,注目作だけにGeForce FXのキラータイトルになる可能性はある。

■GeForce FXは2スロット専有する

 GeForceファミリーは,高性能ではあったが「速かろう熱かろう」というスタンスでパフォーマンス重視で製品を設計してきた経緯があるが,GeForce FXではこの考えを改め,「静音」と「省電力」というフィーチャーを意識しだしたようだ。
 GeForce FXはGPUパイプラインの負荷に合わせ動的にファンや電源を制御する。例えば,通常のWindowsオペレーションでは3Dグラフィックエンジンは活用されない。そういうケースではそこへの電源供給をカットして電力消費を抑えるわけだ。また,効率よく,しかも静かにGeForce FXチップを冷却するためにファンはケースに覆われ,ブラケット側に排気するような機構になっているのがユニークだ。
 なお,GeForceFXのこの熱管理,電源管理システムを総じて「FXFlow」と呼んでいる。かつて「GeForce2 Go」発表時に「PowerMizer」という熱電源管理技術を発表したが,FXFlowはその発展版ということになるだろう。
 ところで,このFXFlowクーリングシステムは背が高く,AGPスロット直下のPCIスロットに干渉してしまう。よってAGPスロットの隣のPCIスロットは事実上利用できないことになる。今回公開された,「実際に動作する」GeForceFXカードを見てみてほしい(下の画面左上)。見ての通りクーラーのカバー部分が第二のブラケットに接続されているので,事実上2スロット使うビデオカードということになる。このあたりの無骨な設計はなんとなく3dfxっぽくないだろうか? ちなみに撮影直前まで実際に動いていたようで,触ってみたら暖かかった
 なおカードへの電源供給は,RADEON9700同様に4ピンの外部電源を必要とする。万が一接続し忘れた場合は,起動時に「最大パフォーマンスが出ません」という警告を出す仕様になっているとのこと。

■GeForce FXにはどんなゲームが出てくるのか

 結局コンシューマ向けGPUは,性能を生かす3Dゲームが出てこなければ「ベンチマーカーの高いおもちゃに」すぎない(いや,それはそれで存在価値はあるのかもしれないが)。
 発表会では,現在開発中のGeForce FX対応3Dゲームとして「S.T.A.L.K.E.R. - Oblivion Lost」のα版の実動デモが公開された。今回公開されたものはゲームになっていなかったが,FPSタイプのアクションアドベンチャーとなる予定。開発はウクライナのゲームスタジオGSC Game World社で,発売時期は2003年の第4四半期の予定(下段右下2枚)。
 このほかデモこそ公開されなかったものの,「AquaNox2」(Massive Development。下段左),「SplinterCell」(Ubi Soft。中段左)などが,GeForce FXに最適化されて登場してくる見込みだ。とくに「SplinterCell」は,プロジェクションシャドウやシャドウマップを積極的に使った「影の演出」が見どころ。影生成能力に長けたGeForce FXを手に入れたときにはぜひとも動かしたい作品だ。

■RADEON9700を2個買うか,GeForce FXを1個買うか,それが問題……か?

 GeForce FXチップのラインナップは当面は1種類で,GeForce4 Ti4600のときのように動作クロックのバリエーションは設けられない。また,GeForce4 TiシリーズはGeForce FX登場後も継続的に販売されることも明らかにされた。
 気になる価格についてだが,NVIDIAは「カードベンダーによって異なる」としかいわないが,各方面の声から察すると,初登場価格は「8万円以上」「9万円近い」というあたりだろうか。これが本当だとすれば,価格の高さも「コンシューマ向けGPUとしては世界一」ということになる。発売時期は2003年1月下旬から2月を予定。
 なおこの記事に先んじて,発表会で公開されたGeForce FXのテクノロジーデモ3本を撮影して,MPEGにして本サイトで公開しているので,ぜひ見ておいてほしい。各種ムービーのダウンロードは「こちら」からどうぞ。追って,実質的にGeForce FX開発のトップである,GeForceFXプロダクトマネージャGeoff Ballew氏へのインタビュー記事も掲載する。(トライゼット 西川善司)


友達にメールで教えよう!
←Back to Daily News
←Back to News Archive