2002年8月1日に，カナダのトロントに本拠を構えるグラフィックスチップメーカー「ATIテクノロジーズ社」（以下，ATI）によるプレスカンファレンスが開催された。千代田区の帝国ホテル"桜の間"で行われたプレスカンファレンスでは，ATIの次期主力モデルとなるグラフィックスチップ「RADEON 9000」「RADEON 9000 PRO」および，フラッグシップモデル「RADEON 9700」が国内市場に正式投入されることが明らかにされたぞ。
　この日は，ATIテクノロジーズジャパンの代表取締役社長 黛 登氏（まゆずみ のぼる）を始め，ATIの会長兼最高責任者（CEO）のK.Y.ホー氏（Kwok Yuen Ho）までがカンファレンスに出席しており，饒舌な二人の発するジョークを交えた和やかの会となった。

■GeForce4MXの対抗馬，次期メインストリームを狙う「RADEON 9000シリーズ」
　RADEON 9700については，以前「こちら」でその"最強っぷり"をお伝えしたとおり。当日のカンファレンスで特に力を入れてデモンストレーションされていたのは，次期メインストリーム候補の筆頭「RADEON 9000」および「RADEON 9000 PRO」である。当サイトの読者であれば"メインストリーム"と聞いてまずアタマに思い浮かぶキーワードは，おそらくNVIDIAの「GeForce4 MX」ではないだろうか。筆者もそのあたりを念頭におきつつ，彼らの話を聞いてみた。ともあれ，まずは「RADEON 9000」シリーズの特徴をば。

●特徴
・Microsoft DirectX 8.1のフルサポート
・4本のパラレル・レンダリング・パイプラインを塔載
・Pixel Shader1.1およびVertex Shader1.4（いずれもDirectX 8.1最新バージョン）に対応
・マルチディスプレイアーキテクチャ「HYDRAVISION」を塔載
・ストリーミング・ビデオ加速/画像品質向上機能「FULLSTREAM」を塔載

　我々ゲーマーの視点で見る限り，上記に挙げた特徴で最も目を引くのは，DirectX 8.1のフルサポートと二つのプログラマブルシェーダーへの対応だろうか。ATIのデモンストレーションでも「ゲーム」という単語は連発され，発表の途中に挿入された「RADEON 9000」vs.「GeForce4 MX440」による画質・速度比較では，Activisionの「Return to Castle Wolfenstein」が使用されるなど，ATIが3Dゲームユーザーをかなり意識しているのが分かる。ちなみに，カンファレンスの終盤では「ソルジャー・オブ・フォーチュン2」や「NASCAR RACING 2002」を始めとした，合計21本ものゲームデモも会場に披露されていた（なぜかシチズンカブトなんかもあった。あれはGeForceオプティマイズタイトルの代表だった気が……）。また，NVIDIA社製のグラフィックスチップ対決で使用された「Unreal Tournament 2003」においては，フレームレートだけでもRADEON 9000が"75"，GeForce4 MX440が"34"と大差とつけて勝利。「GeForceデモが終わるのを待ってたら日が暮れちゃうよ」とCEOのホー氏もご機嫌のようだった。

　ところで，毎度のように気になる3Dゲーマーにとって"買いかどうか"だが――。
　RADEON 9000シリーズをゲームユーザーが考える"エントリーモデル"として捉えるならば，プログラマブルシェーダーに対応している点，ハードウェアによるマルチディスプレイ出力サポートを塔載している点で，GeForce4 MXよりも……といったところだろうか（もちろん，RADEON 9000の設定価格が109ドルであることも考慮して，である）。現行のRADEON 8500と比較しても，パイプラインが1/2に抑えられたものの，およそ倍のテクスチャ生成能力を持つ（要するに，性能が相殺されてトータルパフォーマンスは同等）とのことで，性能に遜色はないといっても過言ではないだろう。
　「RADEON 9000 PRO」に続いて「RADEON 9000」は間もなく出荷が開始され，OEM製品などが巷に出回るとのこと。Direct X9.0フルサポートの「RADEON 9700」は3か月以内に出荷が始まるとのことだ。NVIDIAの後継GPU"NV30"とほぼ同時期にリリースとなりそうなハイエンドモデルにも注目しつつ「そろそろビデオカード換えようか」なんて考えている人は，カード選びの選択肢の一つとして，「RADEON 9000」も頭に入れておいてはいかがか。

　なお，「RADEON 9000」シリーズのPCIバージョンは現在検討中，ノートPCなどに塔載できるモバイルバージョンはこの先2か月でなんらかの発表があるとのことだ。（Gueed)