[E3 2002#69]「Delta Force」で,映画「Black Hawk Down」のソマリア紛争を再現 - 05/28 00:40

 「第2のベトナム」ともいわれたソマリア紛争は,世界警察としての国連の限界を考えさせられる事件だった。モガディシュでの惨事では,デルタフォースやアメリカ陸軍レンジャー部隊の犠牲者も多く,市街地に不時着した戦闘ヘリ・ブラックホークから引きずりだされた米兵が,民衆の前でリンチになっていた壮絶な映像を,今でも記憶に留めている人も多いのではないだろうか。昨年ハリウッド映画となった「Black Hawk Down」と,それに前後してベストセラーとなったマイク・ボーデン(Mike Bowden)氏のノンフィクション小説で話題になった。

 ここで一つ述べておくと,「Delta Force:Black Force Down」(以下,DFBFD)は小説や映画のライセンスを受けているわけではなく,(あくまでも個人的考えだが)裁判沙汰に発展しそうな気配さえある。ただNova Logic社の開発者は,「Black Hawk Downという言葉がコピーライトになっている形跡はなく,歴史的な事実に過ぎない」としており,このことについては問題視していないようだ。ともかく,映画では登場しなかった国連部隊に参加していたカナダ軍やマレーシア軍も,ゲームではキッチリとスポットライトを浴びており,映画以上に実際の事件に忠実なゲームとなりそうだ。

 DFBFDは,映像の雰囲気や色合いが前作の「Delta Force:Land Warriors」と似ていることは否めないものの,ゲームエンジン自体は前作で使用された「Commanche 3」ではなく,最新版の「Commanche 4」のものを使用している。それが明確な違いを生むのは,Commanche 4エンジンに広大なマップを再現できる能力があるからだろう。
 例えば,ミッションブリーフィングが終わった後に,プレイヤーは作戦本部のドアを開けて外へ出てチョッパーに乗り込む。チョッパーはモガディシュ上空を低空飛行で飛び,プレイヤーや仲間のデルタフォースを建物の屋上に下ろしたところで,ようやくゲームに切り替わる。ここまで,ローディングタイムはまったくないのである。
 さらに,ヘリコプターで移動中の上空からはモガディシュの街並みが再現されているが,広い砂漠色の大地には,延々と建物が続いているのだ。ミッション内容を確認できるウィンドウには地図も載っていたが,オリンピックホテルを始めとして,寸分違うことなく現場付近の様子が描かれていた。デモをしてくれた開発者によれば,E3直前には1000ブロック四方のマップでの作動実験にも成功したということで,これまでのゲームにありがちだった"閉塞感"のかけらもない雰囲気が楽しめるだろう。理論的に,プレイヤーにサバイバルに必要なゲームの腕があれば,何時間もかけてモガディシュの街を駆け抜けることだってできるそうだ。

 リアリズムはグラウンドレベルでも追求されており,完成すれば市街がNPCであふれることになる。退却中に(NPCの)夫妻と出くわし,夫のほうが攻撃的な姿勢を見せたので,プレイヤーが妻の後ろに身を隠すが,それでも米兵に対する怒りが収まらない夫は,妻のいる方向に乱射してくる……など実際にあった事件も再現できるほど,AI(思考ルーチン)レベルでの改良も見込めるということだ。デモでは,屋上に着陸したプレイヤーの一団が,そのビルに立て篭もる敵を倒しながら捕らわれている人間を救出し,スナイパーらに注意しながら道路を進んでいくシーンを見せてくれた。
 このときには,ブラックホークに対空ミサイルがあたって墜落していくスクリプトシーンも見られたが,常時無線から漏れる味方軍の連絡や叫び声が聞こえてくるので,非常に臨場感のある戦場風景が再現されていた。今回のデモでは確認できなかったが,プレイヤー自身もチョッパーやハンビーなどを操縦することが可能となるだろうとのことだ。

 Delta Force:Black Hawk Downは現在50%ほどが完成されたばかりだが,2002年の第4四半期のリリースが見込まれている。Nova Logicのブースには,このほかDelta Force:Land Warriorのミッションパックでもある「Delta Force:Task Force Dagger」が展示されていた。(Okutani)


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