[IGF番外編]MS PCゲーム部門のボスに直接インタビュー! - 03/01 17:33

[IGF番外編]MS PCゲーム部門のボスに直接インタビュー!
〜Interview with the Boss

文・写真 奥谷海人

 この「International Games Festival」のさなか,幸運にも,現在マイクロソフトでPCゲーム部門のジェネラル・マネージャーを務めるステュアート・モウルダー(Stuart Moulder)氏にインタビューすることができた。IGFのオープニングスピーチでモウルダー氏が話した"PCゲームのエコシステム"について,聞いてみたいことがあったのだ。
 モウルダー氏は,'90年前半にSierra On-line(現在のSierra Entertainment)からマイクロソフトに移籍した人物だ。現在では,Xboxを含めたゲーム部門の責任者となったエド・フリーズ(Ed Fries)氏と共に,PCゲーム部門の60億ドルという業績を,10年間で4倍にまで押し上げた。奇妙なのは,いろいろと話題に上がることの多いWindowsやInternet Explorerとは違って,その過程ではほとんど返り血を浴びてこなかったことだ。果たして,モウルダー氏のいうエコシステムの真意とは……?

forGamer.net(以下4GN):
 今朝方あなたは「PCゲームの現在の市場においては,販売元,開発元,そしてユーザーの全員が勝つことができる」とおっしゃいましたが,それはどういう意味なのか説明して下さいますか?

Stuart Moulder氏(以下Moulder):
 いいですよ,ではもう1度。そもそもエコシステムの形というのは(と紙を取り出して図を書きながら),マイクロソフトのような資金を持った販売元が,アイデアや技術を持ったGPGやRelicのような開発元に出資し,ユーザーは体験を得て満足するというものです。ぶっちゃけた話,さらにソフトの使用料として,ユーザーから販売元に資金が還元されてくるという循環システムなわけですね。
 今朝私が言いたかったのは,PCゲーム市場がほかの"オールドメディアの市場"と異なるのは,FPSのMODなどを始めとして,PCゲームユーザー層が大きなアイデアを持ち始めたことにあります。今までは,販売元と開発元はともかく,開発元とユーザーの間に強固な壁があったのに,素晴らしいアイデアが生まれる土壌ができあがり始めたということなんです。だから我々販売元からすれば,ユーザー層から生まれるアイデアを,この先どのように養って取り込んでいくかという定義であるわけなんです。

4GN:
 なるほど。そういった「開発元とユーザーの間で生まれた」ものが例えば"Counter-Strike"(画面参照)であるわけなんですが,それ自身ではお金が発生しない,ゲーマーとしての体験でしかなかったじゃないですか。もし,販売元がそういう想像性のあるユーザーを取り込めば,開発元を飼い殺しにしてしまうということになるのでは?

Moulder:
 いえいえ,そうではないですよ……確かに"取り込む"という言葉は言い過ぎだったかもしれません。しかし,このシステムの中においては,アイデアを実体化させる技術というカーネルを保持するのは開発者でしかなく,彼らを抜きにしては立ちいかないものなのです。

4GN:
 しかし,ですよ。極論でいえば,Counter-StrikeなりTeam Fortressが出てきたのは,元々はQuakeやHalf-Lifeのゲームでは満足できなかったために,それ以上のものを欲したのだと考えられませんか? もしSiegeエディタなり,例えば将来的に簡素化されてパワフルになって登場するDirectXなり,それを利用してユーザーが力をつけると,無償で提供する意義について考えてしまうのですが。

Moulder:
 Counter-Strikeが,最終的にHalf-Lifeのプレイヤー数を超えたというのは確かです。しかしHalf-Lifeがなければ,技術的,創造的にCounter-Strikeが生まれてくることは可能だったでしょうか? 専業にしている開発者のアイデアでさえ,90%は使い物にならないし,それはユーザー層でも同じことでしょう。むしろユーザー数の絶対層は多いのですから,そこからよいものを見い出す作業さえ難しい。
 しかしオールドメディアでは不可能でも,このエコシステムを持つPC業界なら,そこから優れたものをすくい取り,全ての陣営の人間のためになることができるのです。その構図の中から,開発者がはじき出されることは,決してないのです。

4GN:
 分かってきたような気がします。ところでマイクロソフトでは,そういう理論を開発元と協議するなどして,そのエコシステムの活性化を補助できるような活動をされていますか? 今回の発表会では,Rise of NationsとCombat Flight Simulator 3以外,すでに知られていたものでしたが。

Moulder:
 皆さんが知らないプロジェクトはもちろんいっぱいありますが,それらは時期を考えて発表しなければなりません。それらの(マイクロソフトがとるイニシアティブの)成果も,折を見てお見せしていくことになるでしょう。

4GN:
 では最後にお聞きしたいのですが,そのエコシステムで還元し合うという法則の意味するところは,(現在,米司法裁判所で話題になっている)Windowsのオープンソース化に肯定的だと思ってよいのですね?

Moulder:
 (周囲とは対称的に笑みさえもらさず)オーケー。PC市場のエコシステムとオープンソースに関しての関連性を最初に話したほうだというのは認めます。でもオープンソースというのは,このエコシステムにはまったく居場所のない別物です。ソース自体を渡すことで,資金の流れがストップしてしまうからです。それで販売元や元のソフトが淘汰されても意味はないでしょう。

4GN:
 なるほど,お時間をいただいてありがとうございました。

 ……最後のジョークは真顔で受けとめられてしまったが,時間がないのにインタビューにも応じてくれたモウルダー氏には,今後PCゲーム業界をキチンと盛り立てていこうという,気迫が感じられた。PCゲーム市場での今後のマイクロソフトには,いままで以上に期待できることだろう。


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