JoWood Productionsはオーストラリアを拠点にする販売/開発会社で,日本では
「Industry Tycoon」(国内ではサンソフトから)でお馴染みの会社である(最近ではメディアクエストから発売される
Rally Trophyという作品もある)。1995年に創設されたJoWoodは,Industry Tycoonのほかでは
「Nations」(これまた国内ではサンソフトから)というRTSを看板ソフトに持っているが,正直なところそれほど目立つ会社ではない,というのが大方の印象だろう。
ところが,2000年6月の株式公開以来キャッシュフローが高調になったようで,ドイツやロンドンをはじめ,世界市場を狙ってサンフランシスコや東京にまでオフィスを構えるに至っている。2001年の7月にはドイツのLeisureSoftを買収することで,ドイツでの流通経路も直接確保するなど,ここのところ快進撃を続けているのだ。
しかし,ソフト会社の行く末を決めるのは,つまるところはゲームソフトが売れるかどうか,ということにかかっているのはいうまでもない。とくに自社の株保有者を納得させるためにも,早いうちにどれだけ優良なソフト群を輩出できるかが重要なのだ。JoWoodにとっては,2002年が勝負の年となるのである。
今回発表されたラインナップを見てみると,そういう第三者の心配を吹き飛ばしてしまうほど良質のソフトが控えているのが分かる。PCソフトばかりのお披露目だったが,コンシューマ機のゲームやMMORPGなども制作されており,今後も要注目のソフトハウスだといえよう。
この連続する2回の記事では,JoWoodが2002年度に向けて開発中の5作品を紹介してみよう。まずは経営Simとアクションアドベンチャーの2作から。(奥谷海人)
■Industry TycoonII(画面写真は,右列上下2枚)
産業革命華やかなる1900年からゲームを開始し,巨大な工業エンパイアを築いていくのが目的のシミュレーションゲーム。160種類に及ぶ資源を操って製品を大量生産し,その製品に見合った交通機関を駆使して輸出入する。プレイヤーは,工場から畑や炭坑に至るまでの立地条件を考慮しなければならず,より合理的な生産過程を築き上げなければならない……と,ここまではTransport Tycoon的。
しかしその一方で,シムシティライクに街の住人の生活環境も考慮することが必要になっており,
街の中心部に製鉄工場を建てようものなら,市民が抗議行動を起こしたりする。また,業種によって労働者の賃金に差が出ると,低所得の人たちがデモ行進を行うことだってあるだろう。
季節によって特定の製品の売れ行きも変わっていくという,何から何まで本格的なシミュレーションゲームなのである。
こう書くと非常に複雑なゲームのように感じるが,インタフェースは非常に洗練されており,マウスだけでさまざまなメニューが引き出せるようになっている。ヨーロッパの開発元らしいグラフィックスの細かさが魅力的で,ビルの間を走っていく車や駅を行き交う列車,羊毛工場の敷地内に放牧されているヒツジなども描写されている。そのグラフィックスを見せるためか,解像度は1600×1200ドットまでがサポートされている。下の画面写真の上のほうはかなり大きい画像なので,精細なグラフィックスを見るには最適だ。
■Conseal(画面写真は,左列上下2枚)
「Conseal」は,アメリカ海軍の精鋭部隊SEALのヘリコプターパイロット,キティー・ホークが主人公のアクションアドベンチャーゲームである。
物語は,彼女が運転していたヘリコプターが南海の孤島に墜落するところから始まる。唯一の生存者として,キティーはこの島に建設された基地の探索に乗り出すのだが,ジャングルや研究所に進入するうちに,この基地を牛耳る大佐の大きな野望を知ってしまう。この基地では,人体実験を繰り返して強力な肉体を供えた人間兵器を開発していたのだ。
"トゥームレイダー"を意識した第3人称カメラ視点のゲームで,
物陰に隠れながらの隠密行動が重要になってくるようだ。触ってみたバージョンがα版であるのはいうまでもないことなのだが,体力差は激しくシビアになっており,廊下に飛び出して銃撃戦を始めることさえままならなかったほどだ。しかしそれだからこそ,ストラテジー性が強調された緊張感のあるゲームになりそうである。画面写真の下のほうはかなり大きめなので注意。