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数々の名作の楽曲をバンド演奏で披露。著名コンポーザー達のトークも冴え渡ったゲーム音楽フェス「Return to 4star」の模様をレポート
ゲーム音楽に深い関わりのあるミュージシャンによるライブ演奏はもちろん,その楽曲を作り上げたコンポーザーによるトークで大いに盛り上がった会場の模様をレポートする。
「Return to 4star」公式サイト
最初に演奏されたのは「世界樹の迷宮」シリーズの楽曲。シリーズの1〜5までを網羅した,いいとこ取りなセットリストを演奏したのは,「世界樹の迷宮」の楽曲を演奏するために結成されたスペシャルバンドSQ F.O.E band。
これまでも,シリーズ10周年記念ライブなどで演奏を手がけているだけに,時には優しく,時には激しい演奏を息ピッタリで聴かせて,会場を盛り上げていた。
演奏曲目:「世界樹の迷宮」シリーズより
迷宮I 翠緑ノ樹海(「世界樹の迷宮」「新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女」)
戦場 初陣(「世界樹の迷宮II 諸王の聖杯」「新・世界樹の迷宮2 ファフニールの騎士」)
戦場 その鮮血は敵か汝か(「世界樹の迷宮III 星海の来訪者」)
迷宮IV 木偶ノ文庫(「世界樹の迷宮IV 伝承の巨神」)
戦場 明日を掴むは死闘の先(「世界樹の迷宮V 長き神話の果て」)
レッドブルが主催するゲーム音楽イベント「DIGGIN' IN THE CARTS」のツアーで,ロサンゼルスの800人規模のクラブでDJプレイをしてきたばかりだという古代氏は,11月17日には恵比寿にあるLIQUIDROOMにて同ツアーの日本公演,12月には「世界樹の迷宮」10周年記念トークショーへの出演が決まっているなど,作曲活動以外にも引っ張りだこな様子。
また,「電脳戦機バーチャロン×とある魔術の禁書目録 とある魔術の電脳戦機」(PlayStation 4 / PlayStation Vita)には,このあとの演奏を受け持ったLaiD Back GorillaのAKIRA氏と,岡島俊治氏がミュージシャンとして参加していることを明らかにしていた。
高田氏が「“大人っぽく”をテーマに,(従来までの打ち込み系よりも)バンド寄り」と説明しただけあって,演奏された「ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期」(PlayStation 4
/ PlayStation Vita)の楽曲は,グルーヴ感あふれるジャジーなテイストに。LaiD Back Gorillaによる,思わず身体が動き出しそうになる演奏が会場をアダルトなムードに包み込んだ。
演奏曲目:「ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期」より
DANGANRONPA V3
Beautiful Lie
希望Searching
和楽器バンドの活動で知られる尺八奏者・神永大輔氏をゲストに加えて演奏されたのは,サウンドノベルの金字塔「かまいたちの夜」,そして光田康典氏作曲の「クロノ・クロス」。前者は物悲しく不気味な雰囲気が,後者は民族音楽的な調べが尺八の音色と絶妙にマッチしていた。
演奏曲目:「かまいたちの夜」より(作曲:中嶋康二郎,加藤恒太)
ペンション・シュプール
悪夢
混乱
俊夫の怒り
遠い日の幻影
演奏曲目:「クロノ・クロス」より(作曲:光田康典)
CHRONO CROSS 〜時の傷痕〜
休憩を挟んだ後半戦最初の演目は,スクウェア(当時)のオムニバスRPG「ライブ・ア・ライブ」。メロウな一曲目から一転,激しいギターの音色が鳴り響くとオーディエンスは立ち上がり,拳を振り上げての大盛り上がり!
演奏曲:「ライブ・ア・ライブ」より(作曲:下村陽子)
SELECT・A・LIVE
PSYCHOで夜露死苦!!
MEGALOMANIA
熱い演奏が終わりステージに姿を見せたのは,「ライブ・ア・ライブ」作曲者である下村陽子氏。2015年に開催された20周年記念ライブを振り返り,「(ディレクターの)時田貴司さんもまたライブをやりたがっている。今年前半はオーケストラツアーが多かったけれど,やはりバンド演奏は熱いね!」と満足顔で語っていた。
ゲストボーカルの霜月はるか氏を加えて披露されたのが,同じく下村氏作曲による「ラジアントヒストリア パーフェクトクロノロジー」の2曲。編曲をベースのAKIRA氏が手がけているものの,生演奏によるライブ演奏は初めてとのことで,演奏する側もリハーサルからたいへん盛り上がっていたそうだ。
演奏曲目:「ラジアントヒストリア パーフェクトクロノロジー」より(作曲:下村陽子)
落花流水
-HISTORIA-
ここで,下村氏と同じスクウェア出身の菊田裕樹氏が登場すると,話題は両氏が「ラジアントヒストリア」と「エスカ&ロジーのアトリエ」で手がけた作詞トークに。「小さい頃からファンシーなノートにポエムを書き綴っていた」という下村氏に対し,「まったく得意ではなかった」という菊田氏。両者の作詞に対するトークバトル(?)を見守っていた霜月氏は,「作曲家と作詞家が同じだと,曲と歌詞との絡み方が緻密になりますね」と,その共通点を見事に言い当てていた。
ということで演奏されたのは,菊田氏が作詞・作曲を手掛けた「エスカ&ロジーのアトリエ〜黄昏の空の錬金術士〜」。民族音楽的な要素を含む複雑な楽曲が,見事なバンド演奏と伸びやかなボーカルのアンサンブルに,来場者はじっくりと耳を傾けていた。
演奏曲目:「エスカ&ロジーのアトリエ〜黄昏の空の錬金術士〜」より(作曲:菊田裕樹)
ドロシアの虎
あめつちのことわり
この日,最後のパートは,菊田氏の代表作の一つ「聖剣伝説2」より選りすぐられた4曲。しかも印象的なオープニングテーマである「天使の怖れ」には,菊田氏がオカリナで演奏に加わるというスペシャルな展開となった。「ほとんどぶっつけ本番」と語っていた菊田氏であったが,原曲のはかないメロディを見事に表現した演奏を披露し,会場から大きな拍手を集めていた。
2曲め以降は超難解なプログレッシブ楽曲で攻めセメの展開となったが,「最後から二番目の真実」は明るくポップなアレンジがなされ,ラストの盛り上がりに一役買っていた。
演奏曲目:「聖剣伝説2」より(作曲:菊田裕樹)
天使の怖れ
危機
子午線の祀り
最後から二番目の真実
鳴り止まぬ拍手に促されて,即座にアンコールがスタート。バンドメンバー,そしてゲストアーティストが再登場して演奏したのは「聖剣伝説 Legend of Mana」の2曲。ヘヴィメタル的なハードなサウンドの「Pain the Universe」,そしてボーカル,バイオリン,尺八と異なる個性のリード楽器が奏でるメロディが重なる「Song of MANA」は,いずれもライブ演奏にはピッタリ。
来場者も立ち上がって手拍子をし,会場全体が一体となる盛り上がりのまま,3時間を超えるライブは終演した。
「聖剣伝説 Legend of Mana」より(作曲:下村陽子)
Pain the Universe
Song of MANA
「Return to 4star」公式サイト
※撮影:中村ユタカ
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